本田圭佑は怒っていた。怒りがマグマのように沸き立ち、逆立った金髪から熱風が吹き出ているかのようだった。
2016年11月、W杯最終予選第5戦・日本対サウジアラビア戦翌日。本田はロシアW杯に向けた最終予選で初めてスタメン落ちし、後半から7歳下の久保裕也に代わってピッチに立ったものの、メディアは「世代交代の始まり」と書き立てた。
本田の時代は終わった――そんな論調に対して、本田は真っ向から反論した。
「自分の言葉が日本サッカー界のためになればと思って、自分がしゃべりたい・しゃべりたくないというのとは別にメディア対応をしてきた。その意図が理解されていないというのは、なんやろうな、お金を貸しているのに、向こうは借りていると思っていない、という感覚に近い」
――不当な批判だと感じた?
「いや、パフォーマンスが良くないことは認めるんですよ。それは自分自身がわかっているし、自分に腹が立っている。それを挽回したるというだけの話。今自分が取り組んでいる練習の詳細を見てほしいという議論をしたいんじゃなくて、誰が見てもわかるところにもう1回戻ったるということ。行きますよマジで。全部を高確率で、成功モデルにパッケージで持って行きます」
――とにかく怒りがあると。
「本当に腹が立ったんで、全員もう1回、みんなびびらせたろうと思っている。見とけよと。本田圭佑は絶対にこのままじゃ終わらんぞと。その覚悟でいます」
本田は這い上がって見せた。
普通の感覚で言えば、よくあるベテランの遠吠えと受け取られてもおかしくない。土俵際から転がり落ち、二度と戻ってこない元エースは山のようにいる。実際、本田も2017年9月の試合を最後に約半年間、日本代表から遠ざかった。
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