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「シットスピン後の“ダン”という強い和音で…」ピアニスト・福間洸太朗が語る羽生結弦『バラード第1番』<同じ作品でも“一期一会”がある>
羽生結弦選手とは2015年の「Fantasy on Ice」で共演させていただきました。当初は私とのコラボレーションはまったく予定されていなかったのですが、神戸公演千秋楽の前日夜に羽生選手から、「『バラード第1番』のステップのところだけでも」と提案いただき、急遽サプライズコラボが実現したのです。
その夜、私は、実際に羽生選手がSPで演技している『バラード第1番』の映像を見て、原曲のどの部分が使われていて、どこがカットされているかを楽譜に書き込んだり、音源を聞いて、頭に叩き込んで猛勉強。なんとか形にして本番を迎えました。羽生選手と詳しく打ち合わせをする時間の余裕すらなかったので、最後はフィーリングとお互いを信じて臨みました。本番は、興奮と緊張と楽しみ、いろいろな感情が入り混じった、非現実的な瞬間でした。
実は千秋楽前日のショーのときに製氷トラブルがあって、観客の方々をお待たせしている間、私が『バラード第1番』を弾いたんです。羽生選手はそれを聴いていて、「ちょっとステップのところのテンポが(自分が踊るには)速すぎるかな」と言われました。サプライズコラボ当日はその部分に気を付けてテンポを取ったのですが、それでも細かなところで演奏者の癖は出るものです。そういったことも含めて、一緒に共演したことは、羽生選手にとってもチャレンジだったのではないかなと思います。
実はコラボすることになる前にも羽生選手が、(『バラード第1番』の)3拍子の音の取り方が難しいんですよ、と言われていました。私は、4分の6拍子(3拍子2回で1小節)だから、3拍子を大きく1つの拍として捉えてみたらどうか、というような話をした記憶があります。
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