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『SEIMEI』『天と地と』を編曲した矢野桂一が説く“羽生結弦の革新性”「音楽と一体になる演技こそが完成形。その日が楽しみ」
2024/05/14
羽生結弦の代名詞ともいえる名プログラム『SEIMEI』から始まった、新しい「和」の表現の追求。楽曲の制作を支える編曲者が、今季の『天と地と』に込めた意図と、来季に期待する「完成形」を語った。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2020-2021シーズン総集編[編曲者・矢野桂一が説く革新性] 「唯一無二の和の表現を」)
―今季の羽生結弦選手のフリー『天と地と』は新たな伝説を予感させるプログラムでした。“和”のプログラムは『SEIMEI』に続き2曲目ですが、だいぶ印象の違う曲ですね。
「羽生君から『天と地と』の編集依頼があったときに、彼が希望したのは大河ドラマ『天と地と』と『新・平家物語』の2つのメインテーマを繋げるものでした。『SEIMEI』は映画のさまざまな場面の曲で、メインテーマは1つですから、音楽編集としての考え方がだいぶ違います。最初は、同じ作曲家とはいえ2つのメインテーマを組み合わせたらどうなるかな、大丈夫かな、と思いました」
手探りからはじまり、7曲を組み合わせて完成した『SEIMEI』。
―女子には『SAYURI』や『蝶々夫人』など和を題材にした曲はありますし、またMONKEY MAJIK+吉田兄弟の曲を羽生選手は使ったことがあります。しかし笛、琴、琵琶といった純和風の演奏は、スケート界にとって新たな挑戦のように感じました。
「今回以上に『SEIMEI』は本当に手探りでした。最初に言われたのは『笛の音は入れて欲しい』と『メインテーマは使いたい』ということだけ。まずは音楽として成立させるために、静かに入っていって、盛り上げて、1回落ち着けて、段々盛り上げて、最後はメインテーマ、という構想を作りました。CD2枚分の曲を何度も聞いて、良さそうなところを繋いで、聞いて、やっぱり止めて、の繰り返し。最終的に7曲を組み合わせました」
―『SEIMEI』の編集段階では、どんな“和”の演技を想像されていたのでしょう。
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photograph by Ryu Voelkel