#846
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「“自制と自信”。これがユヅルに足りないもの」羽生結弦、ソチ五輪前の“飛躍”の予兆は何だった?<本人だけの極秘メモも>

経験を糧に重ねた努力が、ようやく結実した。4年間追い続けた“絶対王者”に肩を並べたことで、オリンピックを前に持ち得た圧倒的な自信。不敵な彼だけが知る“勝利への方程式”とは―。(初出:Number846号[覚醒する天賦の才]「王者への秘策」)

 マイクを握り、聞いてくれと言わんばかりに口元に近づける。今季12月に行なわれたグランプリファイナルのショートで、世界レコード更新となる99・84点を叩き出すと、羽生結弦はちょっと自慢げにこう語った。

「極秘メモがあるんですよ、頭の中に。自分がどういう気持ちの時にどんな演技になるか、どんなミスをするのか、しっかり書き出してある。そのメモのお陰で、今は自分の気持ちをしっかり分析しきれているんです」

 フリーも好演し、世界選手権3連覇のパトリック・チャン(カナダ)を破って優勝。五輪前哨戦ともいわれる重要大会の勝利を引き寄せたのは、19歳の頭に刻まれた“極秘メモ”だという。一体いつからそんなメモが存在していたのか。ルーツは彼の幼少期へと遡る。

 仙台でスケートを始めた頃は、コンプレックスばかりの少年だった。今でこそ身長171cm、体重52kgのモデル体型だが、子供の頃は喘息持ちでヒョロヒョロの貧弱児。おまけに髪型はおかっぱ、好きな色は赤だ。しかし性格は男臭く極度の負けず嫌いだった。

「小学校の頃、同期がみんな3回転を跳べても、僕だけパワーがなくて跳べない。悔しい、絶対に追いついてやる、って毎日思ってた。試合でも、3回転が跳べなくて2位になって、もう号泣。あの悔しさが、僕をここまで成長させてくれた、僕の原点」

 エネルギー源はライバルの存在。このソチ五輪を予感していたように、チャンが世界王者になる前から強烈にライバル視してきた。

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photograph by Naoyoshi Sueishi / Takao Fujita / Tsutomu Kishimoto

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