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“やまびこ打線”に、完全試合目前の死球…甲子園、「故郷が一番泣いた夏」<四国・九州編>

2024/02/19
満塁本塁打で得た4点差を守りきりゲームセット。換気する佐賀商ナインを前に樟南の選手は力なくうなだれた
地元の期待を一身に背負って戦いに臨む球児たち。彼らが甲子園の舞台で演じてきた数々のドラマの中から、歓喜と無念の涙に濡れた不朽の名勝負を、地域ブロック別に4本に分けて紹介する。思い出の記事を紹介する「My Number」でほぼ日・永田泰大さんが挙げたものだ。(初出 2010年8月19日号[完全保存版]47都道府県総覧 故郷が一番泣いた夏。)

徳島 1982年決勝 池田12−2広島商
“やまびこ打線”頂点を極める。

6試合で85安打、7本塁打。蔦文也監督率いる池田は“やまびこ打線”と呼ばれた強力な打撃で、荒木大輔擁する早実をも粉砕。試合巧者で知られる広島商は、エース・池本和彦が変化球主体の投球で臨むも、圧倒的なパワーをかわしきれなかった。エースで4番の畠山準は「いつでも帰る準備をしていたから気楽だった」というが、金属バットを生かした蔦野球の勝利だった。

香川 1978年1回戦 高松商0−1×仙台育英
至高の投手戦の唐突な幕切れ。

仙台育英の大久保美智男、高松商の河地良一はともにプロ注目の好投手。息詰まる投手戦は16回を終えても0が並んだ。もはや再試合かと思われた17回、河地は満塁のピンチを招く。ここで河地の投じた内角狙いの球が打者の頭に当たり、死球押し出しのサヨナラで、熱戦は唐突な幕切れを迎えた。河地はその後の野球人生でも、満塁になるとこの場面を思い出すという。

愛媛 1975年決勝 新居浜商4−5×習志野
秋もまた“あと一歩”。

準決勝で上尾に逆転勝ちして決勝戦に進んだ初出場の新居浜商は、千葉県勢2連覇を狙う習志野と対戦。エラーなどで3点差を一気に逆転されるが、2年生で4番・捕手の続木敏之が放った同点打で追いつく。だが、9回2死一・三塁からサヨナラヒットを浴び優勝を逃した。秋の国体でも習志野に逆転負けを喫し、「同じ相手に2度も負けたのが悔しい」と続木は涙を流した。

高知 1978年決勝 高知商2−3×PL学園
忘れられない最終回。

高知商の2年生投手・森浩二は、強打のPL学園を8回まで0点に抑えていた。だが、相手は逆転で勝ち上がってきたPLだけに2点リードでも嫌な気分で迎えた9回裏、先頭打者を出してしまう。そして四球と犠打の後、犠飛、同点打、さらにサヨナラ打を浴びるまさかの展開。PLの初優勝をお膳立てする格好となった森だが、「あの屈辱があったから野球を続けた」と振り返った。

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photograph by Yuki Suenaga

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