#806
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《ノンフィクション》遠藤保仁「“替えの利かない男”の謎を解く」~明神智和、阿部勇樹、兄・拓哉、恩師らの詳細証言~

2024/02/01
前線への正確なパスでゲームを操り、チャンスを演出する背番号「7」。長らくサブに甘んじた男の日本代表キャップ数は、歴代2位の118に達した。彼がしばしば“替えの利かない選手”と形容されるのは何故なのか。恩師や同級生、チームメイトたちの証言をもとに、その“謎”に迫った。(初出:Number806号証言構成 遠藤保仁 「“替えの利かない男”の謎を解く」)

 替えの利かない選手。

 言うまでもなく、遠藤保仁の枕詞だ。日本代表に名を連ねた男たちも、その実力には素直に敬意を表す。

「ひと言でいえばスーパーですね」と語るのはガンバ大阪の同僚、明神智和。

ガンバでコンビを組む明神 ©Bunshun
ガンバでコンビを組む明神 ©Bunshun

「ぼくらは味方まで直線のコースが見えたら、パスを出します。もう少し上手くいけば、コースを見ずにパスを出す。そこまではできるんですよ。でもヤットは、それができる上にパスコースの近くにいる敵の重心まで見えている。そこで危険を察知したら、パスを出さない。そういう選択もできるんです」

 守りの職人である明神も、遠藤からボールを奪うのは至難の業だと考えている。完璧なトラップをする遠藤は、つねに視線を上げて周りの状況を把握しているからだ。

「トラップが決まらず、ボールを長く見ているような選手は、視線が落ちるので強く奪いに行けるんです。でもヤットは、どんなに速いボールでも、少しくらい浮いたボールでも、一発で次のプレーに移行できる最良の場所に止めてしまう。だから、視線が落ちないんです。こうなると、奪いに行こうと思っても、なかなか行けないものなんです」

 ワールドカップ南アフリカ大会の戦友、阿部勇樹もまた、遠藤の止める技術に一目置く。

 

「自分の得意な位置に一発で置けるから、次のプレーが成功する。インサイドキックの精度なんて、Jリーグでも屈指だと思いますよ。ただ、止める蹴るが上手い選手はJリーグにもたくさんいる。ヤットさんがほんとうに凄いのは、安定して質の高いプレーを続けていることだと思う。代表にACLとたくさんの試合があるのに、9年連続でJリーグのベストイレブンに選ばれているわけですから」

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photograph by Toshiya Kondo

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