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入江陵介「自分の殻を破りたい」の真意とは…“優等生”から日本のエースへの階段【独占インタビュー/2012年】

2024/05/29
ユニオンジャック柄のTシャツで撮影に臨んだ入江
美しいフォームとレースにおける抜群の安定感を持ち味に、ロンドンでのメダル獲得も確実と言われる22歳。だが世界一の座に登りつめるには、まだ何かが足りない。試行錯誤を繰り返し、己と闘うスイマーの胸中に迫った。(初出:Number806号入江陵介 [金メダルへの決意表明]“優等生”の殻をやぶれ。)

「『ヤバイ』というのが、あのレースが終わった後の正直な気持ちでした」

 昨年7月に上海で行なわれた水泳の世界選手権。入江陵介が受けた衝撃は大きかった。

 100m背泳ぎで1位に0秒22差に迫るタイムで銅メダルを獲得していた入江は、自信を持って200mに臨んだ。だが、優勝を狙ったレースでライバルのライアン・ロクテ(アメリカ)に完敗。レース後には、疲労とショックから座り込んでしまうほどだった。

 ロンドンオリンピックで金メダルを目指す入江は勝算を持っていた。

 高速水着が禁止されて以降、ロクテのベストが'10年の1分54秒12だったのに対し、入江は1分54秒08。ロンドンで最大のライバルになる北京五輪王者に対しても、十分に闘えるという自信を持っていたのだ。

 しかし、実際に戦ってみると、ロクテの強さは予想以上だった。

 入江は前半余裕を持ってロクテについていき、自信を持つラスト50mで勝負するつもりだった。だが、150mを0秒89差でターンした時には見えたロクテの姿は、浮き上がった時には見えなくなっていた。強靱なバサロキックで一気にリードを奪われたのだ。そのままロクテが逃げ切り、1分52秒96で優勝。入江は1分54秒11で2位だった。

「1分53秒台中盤から前半の勝負になると思っていたから、ロクテのタイムは予想外でした。もし自分が53秒を出していても勝てなかったし、タイムも良くなかったので……。50mごとのラップタイムも、全てのラップで負けました。それに今まではターンやバサロで負けていても、泳ぎで勝っているという自信があったけど、後から振り返ってみると、泳ぎ、泳法でも差がなくなっていたんです」

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photograph by Tadashi Shirasawa

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