稀有な才能は経験とともに輝きを増している。独創的なオーバーテイクはファンを魅了し、走る喜びが溢れ出す。アストンマーティンの壮大な夢に向かって、速さへの自信は潰えない。
今シーズンのF1ではLet's go!というフレーズがちょっとした流行になった。会心の勝利を決めたマックス・フェルスタッペンや、アルピーヌに来て初の表彰台を飾ったピエール・ガスリーが、ゴール後の無線でチームに向けて叫ぶ。Let's go!――この調子で行こう、と。
きっかけは開幕戦バーレーンのフェルナンド・アロンソ。ルイス・ハミルトンとの激しい攻防を制した瞬間に叫んだ“Yes! Let's go!”はテレビ中継でもオンエアされてすっかり有名になった。作戦やマシンの調子を交信する無線が多い中、Let's goは世界中のファンにストレートに伝わった。それに何より、言葉の爽快さがアロンソらしいオーバーテイクにぴったりだった。
「僕らはストレートではあまり速くないから、普通に(ストレートエンドの)ターン1やターン4で抜くのは無理。だからコーナーで何とかしようと考えた。ターン10でルイスを抜くには手前のコーナーで動きを作ってラインを変えることが必要だったし、ちょっとびっくりさせたと思う。誰もターン10では抜かないから」
ターン9から10にかけては複数の走行ラインが可能。アロンソはハミルトンとは違う弧を描くことによってメルセデスのインに飛び込んだ。バーレーンでもっとも難しいコーナーで、独創性に富んだオーバーテイクを成功させたのだ。
「実は、あのLet's goは私も携帯に入れていて、週に1回は聴いてるんだ」と、アストンマーティンのマイク・クラック代表は笑う。
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photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)