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「スタッフ300人の生活かかってますから」F1ハースのチーム代表・小松礼雄の“会話が生まれる”組織づくり《F1を仕事にするため大学から英国へ》

今季からハースのチーム代表を務める小松礼雄
F1ドライバー以上に限られたポジションに、今季から日本人が収まった。現場からの叩き上げでグローバルな組織のトップに立った信念のリーダー。ここまでの歩みとチームを導く術を聞いた。(原題:[ハース新代表に聞く]小松礼雄「エンジニアの延長線上に代表はあった」)

 初めての春開催となった日本GPで、ドライバーたちに負けないくらいファンの注目を集めている人物がいた。

 小松礼雄――今年からアメリカ人のオーナーが所有する「ハース」を統率するチーム代表だ。

 F1は現在10チームによって、世界中で年間24戦を戦っている。F1のチーム代表とは、ほかのスポーツで例えるなら監督やヘッドコーチのような立場で、そのほとんどが欧米人だ。日本人がこの職に就くのはトヨタF1の山科忠以来15年ぶりのこと。日本国籍のチームや日本企業に買収されたチーム以外では初めてのケースだった。

「2つの信念」を曲げず高校卒業後にイギリスへ。

 ベートーベン研究家として知られる父・雄一郎の息子として日本で生まれた小松は、少年時代から国際的な舞台で世界一を競う仕事に就きたいという憧れを抱いていた。

 そんなとき、日本でF1ブームが起こる。'89年と'90年のアイルトン・セナとアラン・プロストの鈴鹿での対決でF1のすごさを知り、レースエンジニアとなっていつの日かあの舞台で戦いたいと目標を立てた。

 高校を卒業する段階になって、いよいよ目標を実現するために小松は動き出す。

 イギリス発祥のF1は、現在でも10チーム中7チームが同国にファクトリー(前線基地)があり、そこで働く者の多くはイギリスに居を構えている。「ならばイギリスの大学へ行って、エンジニアリングの基礎を学ぼう」と考えた。

 しかし、当時の小松は数学や物理の苦手な文系の高校生だった。進路を話し合う三者面談でも担任の先生から「イギリスへ行って失敗したらどうする? 無茶しないで日本の大学に行け」と反対された。それでも、挑戦を諦めなかった。

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photograph by Mamoru Atsuta

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