日本マラソン界で前人未踏の道を走り続ける36歳が、130回目のフルマラソン・MGCで見せた存在感。独走劇からの鬼気迫る粘りに誰もが釘付けとなった。百戦錬磨のランナーは大一番にいかに立ち向かっていたのか。
(※記事の最後で、インタビューをほぼノーカットで収録した40分のポッドキャストを特別に公開。記事に盛り込めなかった川内選手の熱く、テンションの高い言葉を耳でもたっぷりお楽しみください)
(※記事の最後で、インタビューをほぼノーカットで収録した40分のポッドキャストを特別に公開。記事に盛り込めなかった川内選手の熱く、テンションの高い言葉を耳でもたっぷりお楽しみください)
「頑張れー!」
「負けるな!」
降り続く大雨の中、顔を歪めながら腕を振り、脚を動かしていく2人の選手に向けて大きな声援が飛び続ける。
10月15日、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)。4年に一度、オリンピック代表を選考するためのレースは、40kmを過ぎ、最終盤を迎えていた。声援の主は、同日開催の東京レガシーハーフを走る市民ランナーたち。彼らはコースの反対車線から2人の背中を押し、対決を煽るかのような声を外苑西通りに響かせていた。
「川内! パリ五輪だぞっ」
「大迫、行けるよ!」
声援を受けたのは川内優輝と大迫傑。3位争いをする彼らの前には2人の選手がいた。優勝した小山直城(ホンダ)と2位の赤崎暁(九電工)だ。ただ、前を走る2人にはここまで大きな声援が飛ばなかったという。市民ランナーたちは確かな結果を残してきた2人に、より大きな敬意を払ったのかもしれない。スタートから独走を見せた36歳は、このシーンをこう表現した。
「かなりきつかったんですけど、すごく面白かったし、楽しかった。参加ランナーが多いから声援が全然途切れないんですよ」
川内優輝、4位。2時間9分18秒。
国立競技場のプレスルーム。記者たちは口々に「面白かった」「MGCは最高の舞台だね」と言い合っていた。ドラマの主役は、見事な逃走劇で、ランナーに必要な意志と能力を見せつけた川内だった。
「周囲の景色を見ながら走る時が一番結果がいいんです」
「映像で客観的に見ると、正直自分が思っていた以上に差がついていましたね」
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photograph by Takuya Sugiyama