#1017
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「原さんが『お前ら真面目過ぎ。事件、ねーの?』って」青山学院大学・4年生がこだわった「前倒し」三冠《箱根駅伝“初V”直前の秘話》

2023/12/29
青学大が名門への一歩を踏み出した2015年。その陰には、誰よりも強く栄冠を求め、先導した最上級生たちがいた。チームを支えた主務と主軸2人が、変革の年を語る。(初出:Number1017号青山学院大学  [4年生が振り返る] 「初優勝は僕たちの改革から」)

 速過ぎる。その不安は、しかし、すぐに特大の期待感に変わった。

 2015年、第91回箱根駅伝。4区から5区へとつなぐ小田原中継所で、青山学院大学はトップと46秒差の2位で襷を受けた。そして、山。向かったのは、3年生の神野大地だ。運営管理車に同乗していた当時のマネージャー髙木聖也が回想する。

みんなが本気で三冠を狙っていて嬉しかった。 '18年から神野大地のマネジメントを一手に引き受ける 髙木聖也 ©Wataru Sato
みんなが本気で三冠を狙っていて嬉しかった。 '18年から神野大地のマネジメントを一手に引き受ける 髙木聖也 ©Wataru Sato

「最初の1kmが速かった。監督の原(晋)さんも『ちょっと落とせ』って。そわそわしてましたね。でも、神野は、がんばってない感じなのに5km地点を過ぎてもまだ速かった。速過ぎるんじゃなくて、調子がいいんだろう、と。なので、監督も『そのまま行け』って。10km過ぎたあたりで先頭の駒澤を抜いてからは、監督もようやく落ち着き始めて、同乗している人たちにお菓子とか配り始めてました。そこからは楽しいだけでしたね」

 青学大の常勝軍団としての歴史は、この神野の快走から始まったと言っていい。

 神野なら鬼門の5区を1時間18分台で走れると踏んでいた。そこまでトップから2分差以内につけていれば、山で首位を捉えることができる計算だった。ところが、神野はその期待を大幅に上回った。

 神野のタイムは、区間新記録となる1時間16分15秒。2位の明治大学に4分59秒もの大差をつけた。翌日の復路に向け、絶対的と言えるリードだった。髙木が言う。

「チームの予想通りだったんですけど、こんなにハマるとは。スゴ!って感じでした」

 さかのぼること1年前―。箱根駅伝が終わり、これから最上級生となる髙木ら3年生は、監督にチーム目標を提出しなければならなかった。

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photograph by Getsuriku

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