日本男子バレー飛躍の背景に、戦術の進化あり――。ネーションズリーグでも綿密に組み立てられた攻撃と組織的に築かれた守備が、メダル獲得への道を開いた。高さで劣る彼らが、世界で勝つための術とは何か。日本の“軍師”が、その中身を明かした。
目覚ましい躍進の陰には、やはり聡明なる軍師がいる。代表のコーチとして、大将フィリップ・ブランに仕えるアナリスト。絶えず知恵を絞り、戦術プランを提示してきた伊藤健士ほど日本の強みと弱みの両面に精通した人物もいない。
ここ数年、日本代表は急速に力をつけ、ついには今年のネーションズリーグで銅メダルを獲得するに至った。従来と比べて、日本の何が、どう変わり、ここまで強くなったのか。伊藤の見立てはシンプルだ。
「個人の成長。各々が大きく力を伸ばしたことが、やはり大きいですね」
長くイタリアで活躍する石川祐希は言うに及ばず、近年は高橋藍や宮浦健人がそれぞれ欧州へと渡り、競争の激しいシビアな環境下で揉まれてきた。その効果が如実に表れているという。
「僕自身はチームの戦術を担当していますが、どんなに優れた戦術を用意したところで、そこに個の力が伴わなければ、狙いどおりには機能しないですからね」
現在の代表で言えば、個々の力が上がったことにより、できることが格段に増えたという。無論、これに伴い、戦術オプションも広がったわけだ。なかでも、際立つのがブロック面での進化だという。
「高橋藍はサイズの不利やジャンプなど、ブロック面で課題を抱えていましたが、イタリアに渡って世界標準のブロックに慣れた感じです。さらに言うと、ミドルブロッカー陣のそれも改善されています。いつ、どこで、どう跳ぶか。攻撃側のパスの質に応じて、ステップワークを使い分ける必要がありますが、そのあたりの細かい練習を重ねてきており、その成果がコート上で表れはじめています」
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photograph by FIVB