明徳義塾・馬淵史郎 「“悪役”にされたあの夏、牙を抜かれた完敗の後で」
そもそもカラッとした男だ。
2005年夏、不祥事がきっかけで明徳義塾の監督を退いていたときも、電話をすると、馬淵史郎は「俺は少々のことじゃへこたれんよ」と快活そのものだった。
そんな性格だから野球で泣いた記憶も、2度しかない。
「俺は常々、言っとるんよ。負けて泣くな、泣くなら勝って泣け、って」
そう得々と語るが、1度目は負けて泣いた。
1992年夏の甲子園でのことだ。明徳義塾は初戦で、主砲・松井秀喜を擁する星稜を3─2で下した。今も「松井5連続敬遠」として語り継がれているように、松井との勝負を徹底的に避ける作戦が奏功したのだ。
だが試合後、メディアやファンから、やり過ぎではないかと非難が集中した。そうした論調に納得のいかなかった馬淵は抗議の意味で監督を辞めることも考えた。
「試合が終わったあと、もう帰ろうと思った。監督は誰かに任せて」
「日本中敵に回してもいい」と思っていたのに…
だが周囲になだめられ、6日後、広島工業との試合に臨んだ。馬淵は怒りをエネルギーに転化した。
「日本全国、敵に回してもいいから、わしはやったると思った。向井(康二)っていういいバッターがいて、場合によっては、そのバッターも敬遠させないかん、と。騒がれるのが嫌だから敬遠はしないなんてことは絶対にすまいと思っとった」
罵声はもちろん、物を投げ込む人もいるかもしれない。選手にも「覚悟しとけよ」とひと声をかけてから、グラウンドに足を踏み入れた。ところが、である。
「入ったら、拍手だったんよ。嬉しかったけど、拍子抜けしちゃってね」
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