5年ぶりに日本の観客の前でプレーする若き天才は、「和製カリー」の異名に違わぬ驚異の決定力を誇る。W杯の舞台でもチームの成功のため、そして夢であるNBA入りのためにも、シュートを打ち続ける覚悟だ。
「楽しみだなという気持ちが一番大きく、まずは自分の役割をしっかり全うしたいと思っています。不安な思いは全くなくて、大会へ向けた期待やワクワク感、そっちの方が大きいです」
大会を目前に控えた心境を聞くと、富永啓生はそう答えた。オンコートで見せる激しい感情表現とは裏腹に、オフコートの富永からは柔和で人懐っこい印象を受ける。
高校卒業後に渡米し、現在ネブラスカ大学でプレーする富永はこれまでメディア露出が少なかったが、W杯に向けてその人となりがわかる動画が各サイトにアップされるようになったので、最近オンとオフのギャップを知って驚いたという方も多いだろう。
そんなオンとオフの二面性が目を引く富永だが、私が取材を続ける中で知った彼のもう一つの特徴は、その知性だ。
知性と言っても、河村勇輝のようにしっかりと自分の考えを言語化できるタイプではない。また、渡邊雄太のようにセルフブランディングに長けたタイプとも違う。この二人に比べると、富永のそれは感覚的だ。正しい正しくない、要不要を瞬時に判断し、目標に向かって真っ直ぐ突き進むことができる。言うなれば直感力のようなものが富永の知性であり、強みだと私は思う。
今回は、この直感力という観点からW杯直前の富永に話を聞いてみた。
「大会のレベルが上がれば上がるほど3ポイントラインから打つのは難しくなるので、このW杯という舞台でコートを広げられる選手の一人になれたらいいなと思っています。そのためにも、練習中からかなり遠い距離からの3ポイントシュートを積極的に狙うようにしています」
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photograph by Kiichi Matsumoto