課題だったゴールへの積極性を克服し、いまや日本代表の武器にまで成長した彼は、自身初の大舞台でコート上の支配者となれるか。日本中を驚かせてきた22歳が、次は世界を驚かせる。
彼がコートに入ると、何かが起こる。空気が変わる。
河村勇輝は、そう思わせるだけの躍動をこれまで何度も見せてきた。それは、普段プレーするBリーグでもそうだし、日本男子代表チームにおいても同じだ。
福岡第一高校時代には全国大会のウインターカップで連覇を果たし、その頃から将来を嘱望される選手ではあったものの、身長が小柄であるという不利もあって、まさか「ここまでの」存在になると予想できた者は多くなかったはずだ。
視野の広さから来るアシストパスの技量には、元から類まれなものを持っていた。だが、'22年から本格的に参加をしている日本代表での活動を経て、自らも得点のできる、より怖ろしい選手へと飛躍した。
昨夏、日本代表はW杯・アジア地区予選のさなか、仙台でイランを相手に強化試合を行った。河村はその試合の中で、自ら打てる機会を得ながらシュートに行かず、トム・ホーバスHCから「もっとリングを見ないとだめだ」と叱責された。
このことがきっかけとなって、河村は「変身」した。まずは味方を探す「パスファースト」だったところから転じて、自身の得点を狙いながら、相手ディフェンスが寄ってきたらパスをさばくというスタイルにプレーを昇華させた。結果、'22-'23シーズンのBリーグでは平均得点を前季からほぼ倍となる19.5点に増加させた。日本代表の試合でも何度も2ケタ得点を記録するようになった。
得点するようになって、アシストパスもより生きるようになった。相手を幻惑するかのようなプレーから決まる得点で、会場は興奮の歓喜とどよめきに包まれる。
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photograph by Kiichi Matsumoto