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【絶対エースを追いつめた夏④】2005年8月17日<準々決勝:鳴門工業 VS 駒大苫小牧・田中将大>「突然、球場の空気が反転した」
記録にも記事にも、人々の記憶にさえ留まっていないミスがある。鳴門工業(現・鳴門渦潮)の高橋広監督だけが自覚する、致命的な油断があった。
前年覇者の駒大苫小牧との準々決勝は、戦前の予想を覆す展開で推移していた。鳴門工のエース田中暁は、1回の先頭打者ホームランのみに相手打線を抑えている。1回に2点、3回に1点を奪った打線は、2番手で登板した田中将大を7回に攻略する。2死一塁から3連打を浴びせ、3点を加点したのだ。
致命的とも言える追加点を許した田中将は、「6対1と5点差になって、正直諦めかけた」という。セットアッパーと抑えの役割を兼ねていた彼が、痛打を浴びる。駒苫が想定したゲームプランは大きく狂っていた。
7回表の攻撃と並行して、高橋監督は控え選手にアップを告げていた。守備固めだ。一塁手の藤良裕に代えて立花雄太を、右翼手の西林太樹を下げて三上悠を送り出すのが、徳島県大会からの勝ちパターンである。この日も2人を使おうと、高橋監督は考えていた。
鳴門工の攻撃が終わり、攻守が入れ替わる。一塁側ベンチの左端にいた指揮官の前を、ひとりの選手が横切った。ネクストバッターズサークルから戻ってきた藤だった。
3回戦までの3試合で実に30点を叩き出してきた“新うずしお打線”にあって、6番の藤はチーム最多の8打点を記録していた。この試合でもヒットと二塁打を放ち、2人の走者を迎え入れている。想定していなかった選手起用が、高橋監督の脳裏に浮かんだ。
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