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【絶対エースを追いつめた夏③】2003年8月20日<3回戦:平安 VS 東北・ダルビッシュ有>「僕の野球観とは違う。絶対に崩してやろうと」
「打てやあ! なんで打たへんねん!」
2回裏、突然飛び込んできたその声に、平安(現・龍谷大平安)高校の原田英彦監督は耳を疑った。声の主を見ると、ネクストバッターズサークルにいるダルビッシュ有だった。平安のエース・服部大輔の前に三振に倒れた味方打者に対して、そんな声を浴びせていたのだ。だが、当時ダルビッシュは2年生。三振したのは3年生。上下関係に厳しい高校野球では、まず見られない光景だった。
「打てる。この投手は絶対後半に崩れる」
原田はダルビッシュの弱点を「ハート」だと考えていた。
投げるボールは素晴らしい。右打者の内角、左打者の外角に投げるストレートはナチュラルにシュートしていく。ストレートと同じ腕の振りで投げてくるスライダーのキレ、フワッとくるカーブもやっかいで、シンカーは打者の目の前で消えると言われた。
原田は身長194cmのダルビッシュ対策として、マウンドに畳を5枚重ね、その上にピッチングマシンを置いたり打撃投手を立たせたりしてきた。狙い球は、右打者の外角、左打者の内角のストレートに定めた。そしてもうひとつの狙いが、「ハート」だった。
原田は、ダルビッシュのことをまだ大阪の中学生だった頃から見知っている。軽いジョギングをしていても身体の軸がぶれず、頭が動かない体幹の強さを見て、「投手としての素質は最高だ」とすぐにわかった。一方、ダラダラとした練習態度に精神的な未熟さも感じていた。不安定な精神は必ず投球に現れる。
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※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
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