今年1月、FA杯でのゴールが世界中を驚かせた。ボールを浮かせたままの、華麗なる2タッチを、三笘の母校・筑波大学の浅井武名誉教授が、スポーツバイオメカニクスの視点から検証する。
メッシ+クリスティアーノ・ロナウド=三笘薫。
この先も進化を続ければ、三笘は世界的名手の長所をイイトコ取りした選手になる可能性もあると思います。細かなタッチで相手の隙間をすり抜けるメッシのテクニックと、大きなタッチで相手を置き去りにするロナウドのスピードを兼ね備えているからです。
この3人に共通しているのは「情報処理能力」の高さです。まずは目で見て、ピッチ内がどういう状況になっているのか把握する。情報が集まったら、次に何が起こるのか、状況がどう変化するのか予測する。この情報処理速度、頭の中のデータベースの精度が高いからこそ、一つひとつのプレースピードが速いのだと思います。
三笘が筑波大に入った当初は、まだこの能力が磨かれていませんでした。ボールを持てばドリブルでチャンスを作るものの、試合から消えることも多かった。それが、天皇杯でJクラブと対戦したり、川崎フロンターレや欧州で成功体験を積み重ねることで、データベースの精度が上がったように見えます。
今年1月のFAカップ4回戦、リバプール戦で決めた“空中ダブルタッチ”ゴールは、情報処理能力の高さの象徴でしょう。
あの場面、三笘はクロスをファーサイドで待っていました。バックステップを踏みながら、ゴール前に入り乱れた両チームの選手を視野に入れていた。この密集地帯を避けるべく、右足アウトサイドでトラップし、ボレーシュートを打てる位置にボールを浮かせます。
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photograph by Yoshiaki Matsumoto