いったい今季、三笘薫は何が素晴らしかったのか。そのプレーを項目別に紐解いていく前に、まずはブライトンとの“幸せな関係”について触れてみたいと思います。
僕個人の見立てにすぎませんが、今季のブライトンは最も魅力的なフットボールを演じたチームの1つです。まずもって、その一員だったのは幸運でしょう。
卓抜した指導者との出会いも大きかったですね。シーズン途中に就任したイタリア人のロベルト・デゼルビ監督です。彼の信頼を勝ち得たことは薫自身の実力にほかなりませんが、そもそも指揮官の構想に合致するタイプの選手でもありました。
前任者のグレアム・ポッターが指揮を執っていた頃と比べると、明らかに出場機会が増えましたからね。さらに言えば、ブライトンの特殊な戦術の中で、薫の持ち味から潜在能力に至るまでのすべてが、存分に引き出されていたように思います。
ポジションはワイドオープンでボールをもらい、鋭く仕掛けるウイングですが、その役割は多岐に渡りました。チャンスメーカーとして敵の防御網を縦に切り裂いてラストパスを送るだけではなかったからです。
実のところ、大外から一気に最終ラインの背後へ斜めに走り込み、ゴールを狙うフィニッシャーとしてのタスクも兼ねていました。通常のウイングとは違ったわけです。実際、そうした形から何度も決定機をつくり出し、ゴールも決めていますからね。
薫にはそこで必要とされる能力が見事に備わっていました。ライン裏へ抜け出す際の駆け引きの妙、縦パスを難なく収める技術、追手を振り切る加速力には素晴らしいものがある。これにフィニッシュの精度が改善されたら、それこそ手に負えない選手になるでしょう。こうした前提を踏まえ、薫の凄さに迫りたいと思います。
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