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[進化を止めない24歳]冨安健洋「戦友からのエールを胸に」<仏紙記者の評価も>

2023/04/14
プレミアの名門で戦う若武者を、再び怪我が襲った。思わぬ形での幕引きとなった今季。それでも、掴んだ信頼は揺るがない。この2年、彼はピッチで何を証明してきたのか――。

「世界的に見ても、トミヤスは非常にレアな選手。素晴らしい才能の持ち主だ」

 こう語るのは、フランス全国紙『レキップ』でサッカー部門の主筆を務めるヴァンサン・デュリック記者である。

 同氏はW杯や欧州選手権、チャンピオンズリーグの取材を長年続ける熟練ジャーナリストで、鋭い批評に定評がある。近年は住まいのあるパリからドーバー海峡を渡り、プレミアリーグの取材にも力を入れている。ワールドサッカーをフラットな視点で語ることのできるデュリック記者は、プレミアで戦う冨安健洋を次のように評した。

「トミヤスはDFラインのスペシャリストだ。アーセナルでは右SBのほか、左SBでもプレーできる。日本代表ではCBで出場し、アーセナルでも緊急時はこの位置に入っている。4バックの全てのポジションをこなせる万能性は特筆に値する。

 しかも左SBに入れば、ビルドアップ時に内側に移って守備的MFのポジションに入る。いわゆる偽SBの役割をこなしているが、欧州トップリーグでこのタスクができる選手は限られている。

 バイエルン・ミュンヘンのジョアン・カンセロ、アーセナルのオレクサンドル・ジンチェンコ、レアル・マドリーのダビド・アラバ。

 彼らは偽SBの代表格と言えるが、さらにCBを含めた4つのポジションをこなせる選手となると……少なくともプレミアリーグではトミヤス以外に思い浮かばない」

 冨安の柔軟性は、入団当時から大きな武器だった。2021年、夏の市場でアーセナルに加わると、すぐに右SBでレギュラーの座を掴んだ。球際や空中戦で無類の強さを発揮し、それまで脆さが目立っていた最終ラインの守備を引き締めた。同時に、戦術面でもキーマンとなった。アーセナルは、ビルドアップ時に3-2-5に可変するシステムを採用している。右SBの冨安はサイドから中央に絞ってポジションを移し、3バックの一角としてCBのようにプレーした。ある時は外で、ある時は中へ――。状況に応じて適切に動き、アーセナルを攻守両方で支えたのである。

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photograph by AFLO

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