伝統の強く、美しいアーセナルが戻ってきた。若きタレントが次々と相手ゴールに襲い掛かり、逞しく、うまい守備者たちがボールを奪い、再び前線に届ける。なぜ魅惑のフットボールは復活したのか。東大ア式蹴球部監督で、プレミアリーグの試合解説でもお馴染みの林陵平氏に、戦術の秘密を訊いた。
Method.1「攻撃」幅と深さ、遅攻と速攻を変幻自在に使い分ける。
――今季のガナーズはこれまでと比べて、一味も二味も違いますが、何が一番大きく変わったと思いますか。
「まず攻撃面から見ていくと、ファイナルサードで背後を取りに行くようになったことですね。つまり、最終ラインの後ろのスペース。そこをアタックする場面が格段に増えました」
――これまでは相手ディフェンスの手前でボールを動かすケースが多かったと。
「プレス回避を含め、ポゼッション自体は得意でした。ただ、背後を突くアクションが少なかったので、怖さがなかったんです。それが今季は相手の背中、守備側にとって一番怖いところであるライン裏を取りに行くようになった。数多くのチャンスをつくり出している最大の要因がそこにあると思います」
――その意味では、左のインサイドMFを担うグラニト・ジャカのアクションは印象深いですね。果敢にボックス内のポケットに走り込み、得点に絡んでいます。
「ジャカはもちろん、ブカヨ・サカとガブリエウ・マルチネッリの両翼にしても、背後へのアクションが増えました」
――攻撃の要諦は“幅と深さ”と言われますが、幅だけではなく、深さを使った攻めを加えた効果は大きいですね。
「その流れで言うと、攻撃に縦の速さが加わりましたね。これまでは比較的遅攻が多く、カウンターを狙えるような局面でもポゼッションの回復に走る傾向がありました。今季は前方に広がるスペースに対してダイレクトにアタックする場面が増えています。サカやマルチネッリの速さを一段と生かせるようになりました」
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photograph by Yuki Suenaga