W杯通算4度目となるベスト8を懸けた一戦で、日本代表はまたしても悔し涙を流した。しかし戦いは続き、新たな挑戦が始まっている。日本サッカーと選手たちを進化させた、勤勉な指揮官の功績を探る。
1-1でゲームが推移していた延長前半9分、クロアチアがルカ・モドリッチとマテオ・コバチッチを同時にベンチに下げたとき、チャンスが来たと心が沸き立った。
だが、ほどなくしてその考えが甘いことに気がついた。
絶対的な存在を2人同時に交代させたにもかかわらず、クロアチアのチーム力はほとんど変わらなかったのだ。
一方、日本のピッチサイドでは後半終盤から引き続き、町野修斗が投入間近というテンションでアップに励んでいた。日本にワンチャンスがあるとしたら、町野投入によってパワープレーを仕掛け、こぼれ球を浅野拓磨や南野拓実が拾うしか可能性はなさそうだった。
だが、町野が送り出されることは最後までなかった。
そのことで指揮官を非難するつもりはまったくない。
ピッチには右膝を傷めてスペイン戦でベンチスタートとなった遠藤航、ドイツ戦で左腿裏を傷めてこの試合が復帰戦となった酒井宏樹、右腿裏に違和感を抱えて今大会初先発となった冨安健洋が立っていたのだ。いつ故障を再発させてもおかしくない状況で、交代枠をひとつ余らせておくのはセオリーである。
得点が必要とされる時間帯で主軸の2人を同時に下げられるクロアチアと、負傷を抱えた選手の力を借りなければならない日本――ゲームは接戦だったが、チーム力の差を突きつけられる思いがした。
だから、PK戦に持ち込めばベスト8への切符を手繰り寄せられるかもしれないと夢見た一方で、PK戦によってクロアチアが次のステージに進んだ結果は、現実として受け入れることができた。
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photograph by Ryu Voelkel