全米オープンベスト4。リオ五輪銅メダルに続く快挙を現地で解説した僕は、錦織圭選手のグランドスラム制覇がより近づいてきたことを確信した。
実は全米オープンでの圭のテニスは、コートの内側でリズムよくプレイするナチュラルな圭、ベストな圭ではなかった。ただ、僕には希望があった。それは圭のメンタルサイドの充実。そしてそれが、ウインブルドンと五輪を制した現時点での最強選手、アンディ・マリーとの準々決勝で発揮された。
第1セットを簡単に奪われ、五輪準決勝に続いてまたも戦わずして終わるかに見えた。しかし圭は自分のテニスを変えた。超守備型のマリーに対し、よりしぶとくラリーを続けて攻める戦略を選択した。1ポイントを奪うのにこんなに心も体も消耗するのか? と思えるほどの激戦を耐え続けると、今度はマリーが焦り、ミスが出始めた。一方の圭にはリズムが生まれ、ボールがより鋭くなり、立ち位置もコートの内側へ。試合後「出だしがよくなかったので、ボールをつなげて、耐えるように頑張ってプレイするよう心がけました」と振り返った圭。五輪での敗戦を“悔しい力”に変えたからこそ、2年前の全米での圭自身のテニスに再会でき、今大会一番の番狂わせを起こしたのだ。
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photograph by Hiromasa Mano