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<通訳から見たイビチャ・オシム> 千田善 「言葉だけでは人は動かない」

2010/09/29
代表監督時代から現在まで、4年以上にわたり通訳として
向き合ってきた彼に、人間オシムの魅力とは何かを聞いた。

 '06年7月の日本代表監督への就任以来、イビチャ・オシムの隣には常に彼の姿があった。その光景は、オシムが脳梗塞に倒れて職を退いた後も変わることなく、厳しいリハビリをこなしながら日本協会のアドバイザーを務め、ついに6年間過ごした日本を離れることになる'09年1月まで続いた。

 千田善。旧ユーゴスラビアをフィールドとする研究者として、'80年代から'90年代にかけ、留学時代も含めて10年近い在ユーゴ経験を持っていた彼は、突然舞い込んだオシムの通訳という仕事をなかば歓喜しながら引き受けた。中学、高校とサッカーに打ち込み、現在もシニアリーグでプレーする元サッカー小僧の千田にとって、オシムは、魅力的なサッカーを見せてくれる稀有な指揮官として、在ユーゴ時代の憧れの存在だったのだ。

 オシムが好むサッカーのスタイルは別にして、そのパーソナリティや考え方についての予備知識はほとんどなかった千田だったが、通訳として身近に接するようになって、間を置かずにわかったことがあった。

「代表の合宿や試合が終わって、次の週にJリーグの視察をすると、スタッフミーティングでも、前に呼んだ選手のプレーがどうだったかという話題になりますよね。そんなときにオシムさんから出てくるのが、『もっとここを直せばいい選手になるのに』とか『こういう種類の失敗が繰り返されているから残念だ』といった言葉なんです。批判というより、絶対にこの子はもっと上手くなる、上手くなるはずだという愛にあふれてる。結果として病気になって辞めた後も、いまだに当時の教え子のことを気にしてますしね。そういったまごころなり愛情なりがあるから、ひねくれた物言いもトゲがないというのかな。逆にすごく笑えちゃうということになるんですけどね」

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photograph by Toshiya Kondo

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