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バルサとセスクの相思相愛が解消!?
急成長する19歳、新鋭チアゴの存在。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima
posted2011/02/24 10:30
W杯優勝後、母国での凱旋イベントでプジョルらにバルサのユニフォームを着せられるセスク
バルサには本当にセスクが必要なのか? という疑問。
アーセナルとの契約があるため公に発言したことはないものの、セスクがバルサ復帰を望んでいることは公然の事実である。
「アーセナルを出ていくとすれば、それはバルサでプレーするためだ。マドリーに行く気はないし、チェルシーは好きじゃない」
先日、彼が行きつけの韓国人美容師に、こう発言したという話も出ている。だからこの夏にバルサが十分な移籍金を用意できないのであれば、もう1年アーセナルに残って新たなチャンスを待てば良い。
ただ、それはあくまでもバルサが必ず獲得してくれるという前提があって成り立つ話。そして2つ目の問題はそこにある。
バルサには本当にセスクが必要なのか。そんな疑問が今、バルセロニスモの中で広がりつつあるのだ。
16歳の時、クラブに一銭の利益も残さずアーセナルに引き抜かれたセスクについて、大金を払って買い戻すことに反対する意見は以前からあった。それでもこれまでは彼がシャビの代役となり得る唯一無二の選手と見られていたことで、何としても呼び戻すべきとの意見が大半を占めていた。
だが、それが今変わりつつある。
原因はチアゴ・アルカンタラの台頭である。
グアルディオラ監督も絶賛する比類なきチアゴの才能。
元ブラジル代表MFマジーニョの息子としても知られるチアゴは、まだシャビほどのプレービジョンはないものの、イニエスタに匹敵するボールコントロール技術とパス能力、さらにドリブルで自ら持ち運べる突破力と機動力、そしてロナウジーニョ顔負けのトリックプレーを可能にする“チスパ(閃き)”を持ち合わせるマシアきっての逸材だ。
17歳でバルサBに昇格し、今季はBチーム登録ながらトップチームでプレー。国王杯のセウタ戦やアルメリア戦ではシャビの代役としてゲームメイクを担い、リーガ17節レバンテ戦では途中出場で停滞した流れを一変させるなど、少ない出場機会の中で確かなインパクトを残してきた。
セビージャやラシンからレンタル移籍の打診を受けた1月、クラブは来季チアゴをトップチームの選手として登録することを発表した。
翌日の会見でグアルディオラ監督は「チアゴは唯一無二の才能を持つ特別な選手だ。来季は我々と共にプレーする。守備を固めた相手に対し、彼は起用するたびに他の選手とは異なる何かをもたらしてくれる」とその無類の才能を絶賛している。