スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサとセスクの相思相愛が解消!?
急成長する19歳、新鋭チアゴの存在。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima
posted2011/02/24 10:30
W杯優勝後、母国での凱旋イベントでプジョルらにバルサのユニフォームを着せられるセスク
スペイン代表としてシャビやイニエスタを脅かす存在に。
19歳にしてスペインU-21代表の司令塔も務めるチアゴは、近い将来バルサとフル代表の双方でシャビやイニエスタの立場を脅かす存在となるはずだ。
そんな若手有望株がベンチに控える以上、移籍金が高騰している状況で無理にセスクを獲得する必要性は見当たらない。むしろ来季セスクが加入すれば、トップ契約と引き換えにBチームでプレーする権利を失ったチアゴがボージャンと同様の飼殺し状態になってしまう危険性もあるだろう。
セスクはまだ23歳と若い。それに2015年6月まで残っているアーセナルとの契約満了が近づくにつれ、彼の市場価格も下がるはずだ。だからバルサとしては、少なくともシャビがフル稼働できるであろう今後1、2年はセスク獲得を見送る方が得策ではないか。そんな意見を耳にする機会がここ数カ月で急激に増えているのだ。
このような背景を踏まえてセスクのバルサ移籍の実現性を考えると、セスク本人がいつまで移籍の機会を待てるかが鍵となるのではないかと思う。今後のチアゴの成長具合によってはセスク不要論が加速する可能性も十分あるだけに、本人としては内心穏やかならぬ日々が続くことだろう。
セスクには“ブラウグラナ”のユニフォームを着て欲しいが……。
一記者の立場からすれば、いっそセスクにはマドリーに移籍してもらった方が面白いと考えることもある。
バルサ-マドリー間に新たな“モルボ(因縁)”が生まれるし、単純にマドリーのサッカーが面白くなることで、リーガがさらに盛り上がることは間違いないからだ。
一方、一ファンとして長年バルサ復帰を夢見てきたセスクの心境を考えると、やはり彼にはいつの日かブラウグラナ(青色とエンジ色)のシャツを着てもらいたいという気持ちにもなる。
3月8日に行われるCL決勝トーナメント1回戦第2レグ、バルセロナ対アーセナル戦。世界中の注目を集めるであろうこの日、彼はどんな気持ちでカンプノウのピッチに立つのだろうか。