スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサとセスクの相思相愛が解消!?
急成長する19歳、新鋭チアゴの存在。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima
posted2011/02/24 10:30
W杯優勝後、母国での凱旋イベントでプジョルらにバルサのユニフォームを着せられるセスク
「バルサが強すぎると、それはそれでネタがなくて困る」
リーガ記録の勝点99を叩きだした昨季を上回るペースで首位を独走する今季のバルセロナは、そんな贅沢なぼやきが番記者達から聞こえてくるほどに強い。
カンプノウでは毎試合お決まりの圧勝劇が繰り返され、「○○連勝」といった記録更新の話題ももはや新鮮味を失ってしまった。ピッチ外に目を向けても、前任のジョアン・ラポルタと違って大人しいサンドロ・ロセイ会長からは優等生発言しか聞こえてこないし、イブラヒモビッチのような悪童がいなくなったロッカールームからも面白いネタは出てこない。
そんな平穏過ぎる日々が続くなか、各スポーツ紙のバルサ面で最もよく目にする名前がセスク・ファブレガスだった。
昨夏バルサから移籍金4000万ユーロ(約45億円)のオファーを受けた際、アーセナルのヴェンゲル監督は1年後のバルサ移籍を認めることでセスクの慰留に成功した。この時点では次の夏のバルサ行きは確実かと思われていたが、フットボールの世界に絶対は存在しない。
この数カ月で、彼とバルサの相思相愛関係は微妙に変わってきた。そしてそれは、ネタに飢えた記者達にとって格好の餌となってきたのだった。
F・トーレスの高額移籍の影響でセスクの値段も急上昇!
セスクのバルサ移籍を阻む障害は現在、主に2つある。
1つは金銭面。まず1月にチェルシーがフェルナンド・トーレス獲得に移籍金5800万ユーロ(約65億円)を払ったことで、セスクの市場価格が少なくとも彼と同額か、それ以上に上がってしまった。
さらに、その後チェルシーが移籍金6000万ユーロ(約68億円)で来夏のセスク獲得に乗り出すと報じられると、続いてレアル・マドリーも同額のオファーを用意して競売レースに参戦。これらの動きに対し、アーセナル側は「6500万ユーロ(約73億円)の即金払い以外は受け付けない」という強硬姿勢に出ているという。
これら一連の「セスク・インフレ」は、健全経営を謳うロセイ会長の下、来季の補強予算の上限を4500万ユーロ(約51億円)に定めているバルサの立場を厳しいものにさせている。
ただ、問題が金だけなら決定的な障害とはならない。誰よりもセスク本人がバルサ行きを望んでいるからだ。