博多の人・王貞治BACK NUMBER
「バカ野郎、今後一切、こういう発言をするな!」ホークス現監督が叩き込まれた“王イズム”の真髄「王監督じゃなきゃ、こんな強くなっていない」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2026/09/30 17:05
王が博多で築いたものが脈々とホークスに受け継がれ、今も小久保裕紀、城島健司たちによって伝えられている
本塁打と打点の2冠を独走中の主砲・栗原陵矢は、1-1の同点で迎えた8回の守備で、先頭打者の日本ハム・野村佑希の三ゴロを処理するも一塁へ悪送球。その後、先発のリバン・モイネロが2死三塁から日本ハムのロドルフォ・カストロに中前タイムリーを打たれ、これが決勝点に。モイネロは好投も実らず、失点2、自責点1で敗戦投手となった。
その3日前の8月29日・オリックス戦(京セラドーム大阪)でも、3回2死二、三塁から栗原が一塁悪送球。これが失点につながり、先発の大津亮介は6回4失点ながら自責点は0。その試合もソフトバンクは落としていた。
自らの守備のミスで続けざまに敗れたとあって、1日の試合後、宿舎へ戻るバスに乗り込む前、報道陣の問いに対して、栗原が「何もないです。何とでも書いてください」と言い残したことが、メディアで大きく報じられていた。
王から小久保へ、そして栗原へ伝えられた教え
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現役時代の小久保にも、実は“同じ経験”があった。
ある試合で、栗原と同様に、自らの失策が引き金となってその試合に敗れた。
「自分の実力は、あんなもんです」
その翌日、球場入りすると、小久保は即座に王に呼ばれた。
「本当にこういう発言をしたのか?」
大きな見出しで、小久保の言葉が報じられていた紙面が、監督室に広げられていた。
「はい、しました」
小久保が認めるや否や、王は烈火のごとく怒り、そして怒鳴り上げた。
「バカ野郎。我々はファンに夢を売って商売をしているんだ。この記事を読んで、ファンはどう思うんだ? 小久保裕紀という選手に対して、夢を見ることができなくなるんだ」
その一挙手一投足が、発した言葉が、常に注目される。それが、スタープレーヤーの宿命でもある。その背中を、若い後輩たちが見ている。だから王は、まだ20代半ばだった頃から、小久保に「若手の手本になりなさい」と言い続けてきたのだ。
「今後一切、こういう発言をするんじゃない」
小久保が、その“王からの教え”を、今度は栗原に伝える番だった。
“何とでも発言”の翌日、エスコンフィールドに到着した直後、小久保と栗原は2人きりで向かい合い、話し合ったという。
「監督と僕の話なので」と内容については明かさなかった栗原だが、チームリーダーとしての心得を、改めて説かれたのだろう。そもそも、福井・春江工高時代には、U-18日本代表に選出され、代表チームで主将を務めた経験もある、リーダーの素養を持ったプレーヤーなのだ。
「やっぱり、選手会長としてもそうですし、一人の選手としてもそう。野球以外のところでも、もっともっと自覚と責任を持ってやっていかないとな、とは思いますし、これからしっかり頑張ります」(栗原)
そうやって、王の思いは、世代を超えて伝えられていく。


