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《引退発表》「勝ちたいから攻め抜いた」4度目の五輪に挑んだ高木美帆の”純粋な思い”「悔しいという言葉では表現できない…私の挑戦は終わったんだなと」
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矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto / JMPA
posted2026/03/11 06:20
最終種目の1500mで序盤は飛ばしに飛ばした高木美帆だったが、最後の1周で失速した
500mで2大会連続メダルを獲得した持ち味のスピードに乗り、効率の良い滑りでラップを落とさず、上がり1周の落ちを最小限にとどめてゴールする。この展開は'19年3月、今なお破られていない1分49秒83の世界記録を出した時のパターンでもある。高木は自分にしかできないと自負する黄金の戦略を、集大成のレースにぶつけた。
「この結果は実力不足だったんだなと思います」
だが、結果は無情だった。上がり1周はその前の周回より2秒59も落ちた。表彰台に上がった3人は最終ラップの落ちがいずれも1秒台にとどまっていた。
「1500mは守りより攻めの方がタイムは出やすい。そう思って滑りましたし、300から700にかけては今シーズンで一番良かったという感覚がありました。故に、自分のミスではなく、ラストのスケーティングやスタミナも含めて、この結果は実力不足だったんだなと思います」
「自分の挑戦は終わったんだな」
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今大会は五輪記録が連日誕生していたが、この日は1組目からタイムが遅く、滑らない氷だった。スピードに乗せていくタイプの高木には不向きなコンディション。
「もし私が絶好調で1500mをブイブイ勝っている時なら(ペースを)コントロールすることも考えたかもしれません。昔の話ですが、実際にそうしたこともあります。でも、そういう余裕がありませんでした」
ラストの直線では「体が止まっている、動きが乱れていると理解はしていた」という。そう思いながら滑る苦しみはいかばかりだったろう。
「この順位は受け入れられないというより、ああそうか、という感情。悔しいとか申し訳ないとか、そういう言葉で表現できない」
ひびの入ったガラスのように傷ついている高木が目の前にいる。
「今一番感じているのは、“自分の挑戦は終わったんだな”ということだけですかね。結果を感情と一緒に受け止めるのをブロックしているところはあると思います」
高木が泣くことは滅多にない。'14年ソチ五輪の代表選考会で敗れた時もこらえていた。だけど、この日はミックスゾーンでも目が潤んだままだった。日の丸の旗を振って応援してくれた人々や、会場中から降り注いだ拍手に涙した跡がまだ残っていた。
「今感じている気持ちとしては、すごく冷静に見ると、ああ頑張ってきたなっていう思いはあります。でも頑張ったな、で終わらせたくないという気持ちもあって……」
注いできた熱量、困難を乗り越えた日々の思いまでまとめて整理するには、あまりに時間が足りなかった。
【続きを読む】サブスク「NumberPREMIER」内「純粋に攻めていきたい」4度目の五輪に挑んだ高木美帆が“集大成のレース”1500mに抱いた特別な思いとは「最後まで試練を与えてくれる種目でした」《史上最多のメダル獲得》
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