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「純粋に攻めていきたい」4度目の五輪に挑んだ高木美帆が“集大成のレース”1500mに抱いた特別な思いとは「最後まで試練を与えてくれる種目でした」《史上最多のメダル獲得》

2026/02/27
他の誰にも真似できない不断の努力と準備を重ねて挑んだ4度目の五輪の舞台。1000mと500mを皮切りに、パシュートでも3大会連続のメダルを掴み取った。そしてキャリアの集大成として臨んだ1500mは……あまりに残酷な結末だった。儚く夢は破れた。しかし、彼女は挑戦の過程で多くのものを残してきたのだ。(原題:[史上最多のメダル獲得]高木美帆「人生を懸けて、攻め抜いた」)

 スタンドをオレンジ色に染め上げるオランダファンからも万雷の拍手が降り注ぐ。ライバル国からこれほど労われる選手がいるだろうか。2月20日のスピードスケート女子1500mは、今大会6レース目にして自身最後の種目だ。

 高木美帆は攻めた。勝ちたいから、攻め抜いた。'18年平昌五輪、'22年北京五輪に続く3大会連続の最終組アウトスタートから、祈りにも似た思いを氷に伝えた。入りの300mのタイムは全体の2位。700m、1100mも2位で通過した。しかし、そこから明らかにスピードが落ちた。ラストの直線は両手を振って推進力を生み出そうとしたがその力すら残っておらず、右手を振るだけで精一杯。電光掲示板には1分54秒865、6位という結果が映し出された。

「長距離勢が1500mで強くなっている中、私ができることは何かというと、やはり攻めること。それしかないというのではなく、純粋に攻めていきたいという気持ちで挑み、それは実行できたと思っています」

 レース後の表情は硬く、悔しさをプライドで塗り固めているようだった。

 500mで2大会連続メダルを獲得した持ち味のスピードに乗り、効率の良い滑りでラップを落とさず、上がり1周の落ちを最小限にとどめてゴールする。この展開は'19年3月、今なお破られていない1分49秒83の世界記録を出した時のパターンでもある。高木は自分にしかできないと自負する黄金の戦略を、集大成のレースにぶつけた。

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photograph by Asami Enomoto / JMPA

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