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「お前は兄貴に絶対に勝てない」と…ノーマルヒルでは「まさかの失速」失意の絶対王者が破った “プレブツ家の呪い”「メダルは結果に過ぎない。ただ…」
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雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA
posted2026/02/18 11:18
スロベニア男子初となるジャンプ個人での金メダルを獲得したドメン・プレブツ。絶対的な優勝候補として挑んだが、栄冠までには多くの困難があった
人口約200万人の小さな国スロべニア。5人の兄妹は小さな都市クランに生まれ、今はもっと小さな村ドレニャ・ヴァスに家がある。
長男ペテル、次男ツェネ、三男ドメン、長女ニカ、次女エマ。
次男のツェネも北京五輪の男子団体銀メダリストで、すでに引退して今大会にはテレビの解説者として訪れている。
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ジャンプをしていないエマを除けば、全員が五輪メダリストという超エリートジャンプファミリー。彼らの父は国際飛型審判員の資格を持つ一方で家具屋を営み、子どもたちの選手活動を支えてきた。
1月の札幌W杯で来日した際、「ジャンパーを育てるプレブツ家の家訓のようなものはあるのか」という質問に、ドメンはこう答えている。
「特別な秘密はありません。ただ、厳格な両親のもとに育って、祖父母が農場を経営している関係で、コツコツ仕事をしていく大切さを学びました。地道な日々の努力があってこそ実を結ぶものがある。それを知っていることが秘訣というか、『プレブツ家の教え』かもしれません」
圧倒的な優勝候補も…“五輪の魔物”が襲う
ドメンの地道な努力は、兄ペテルが引退した2023―24年シーズンにようやく実を結ぶ。札幌で5シーズンぶりのW杯優勝を果たすと、兄と入れ替わるようにしてトップへと登りつめていく。翌シーズンには世界選手権のラージヒルで優勝。さらにオリンピックシーズンとなる今季は、連戦連勝の手のつけられない強さを発揮し始めた。
同じようにW杯で無双する妹のニカとともに、圧倒的な金メダル候補として迎えた今大会。だが、4年に一度の舞台は一筋縄ではいかなかった。
ノーマルヒルではまずニカが銀メダルに終わり、ドメン自身も6位と波乱に巻き込まれた。最強の2人を揃えても個人金メダルに届かない。それはスロベニアの、そしてプレブツ家のジャンパーにかけられた重い枷のように思えた。

