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「お前は兄貴に絶対に勝てない」と…ノーマルヒルでは「まさかの失速」失意の絶対王者が破った “プレブツ家の呪い”「メダルは結果に過ぎない。ただ…」
posted2026/02/18 11:18
スロベニア男子初となるジャンプ個人での金メダルを獲得したドメン・プレブツ。絶対的な優勝候補として挑んだが、栄冠までには多くの困難があった
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Tsutomu Kishimoto/JMPA
ある人は手に持った旗を振り、ある人は肩にかけ、プレダッツォのジャンプ会場にはどこもかしこもスロベニア国旗がはためいていた。
同国初の女性大統領ナターシャ・ピルツムサルも、IOCのカースティ・コベントリー会長、スロベニア五輪委員会の会長を引き連れて来場した。
ジャンプ競技の花形ともいえる男子ラージヒル。14日の試合はイタリアで開催されていながらも、スロベニアの国民的行事といった様相を呈していた。
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その興奮の渦の中心にいたのは26歳のドメン・プレブツ。今季W杯で20戦12勝。個人ノーマルヒルではまさかの6位とメダルを逃していたが、妹のニカとともに獲得した混合団体の金メダルで弾みをつけ、今度こそは……の期待がかかっていた。
しかし、大声援を背に飛んだ1本目で2位。トップに立った二階堂蓮に7.0点、距離にして4m弱の差をつけられて窮地に追い込まれた。スロベニアの男子選手はこれまでにジャンプ個人の金メダルを獲ったことがない。歴史的瞬間を見届けようと集まったファンの願いはもはや風前の灯だった。
追い詰められた絶対王者…「お前は兄貴には勝てない」
「お前は兄貴には絶対に勝てない」
ドメン・プレブツのW杯での挑戦は、兄と比較して頭を押さえつけようとする周囲との戦いから始まった。
2015年の初参戦当時はまだ16歳。7つ上の兄ペテルはそのシーズンに年間15勝を挙げてW杯総合王者となり、すでにオリンピックでも複数のメダルを獲得していたスロベニアジャンプ界のスーパースターだった。
偉大なる兄と比べられることにどれだけの重圧があったのか――。
ドメンも翌シーズンには早くもW杯で4勝を挙げる活躍を見せている。しかし、大きな成功をつかむにはまだ若すぎたのかもしれない。その後は安定した成績を残せずに伸び悩み、2019―20年シーズンからの3シーズンは表彰台から遠ざかった。
一時はW杯の下部大会を回ることもあった不遇の時代。周囲から浴びせられた言葉は、次第に重く、呪いのようにドメンにのしかかっていったに違いない。


