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野球クロスロードBACK NUMBER
《ブルージェイズと94億円契約》巨人・岡本和真を育てた名伯楽が語る“指導の原点”「どんなにすごい選手でも、天狗にさせてしまうと…」
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2026/01/06 06:03
ブルージェイズと4年総額94億円の契約で合意したとされる巨人の岡本和真。智弁学園時代に指導した名伯楽が語る「指導のポイント」とは?
個人的にはバッティングが好みだと言うが、高校は恩師の上村恭生のもと練習の大半を守備に割き、大学ではトータルでスキルを伸ばせた。そして社会人となり、全力疾走などの野球における基本を改めて注入された。
小坂は「原点は何って言うのはないんですけど」と控えめに言うが、彼のなかに「基本」が強く根付くのは確かだ。
「社会人になったとき全力疾走をしなかったことがあって、今、近大で監督をしている光本(一洋)さん怒られましたからね。最初は『なんで全力で走らな……』と思いましたけど、先輩たちは常に全力疾走するし、守備のカバーリングとかも怠らない。
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生活がかかっている社会人だからこそやるわけですけど、それって誰だって当たり前のことですよね。そういうなかで『打つだけではアカン』とか、途中で気づかされることもありました」
パナソニックでの5年間を経て、小坂は05年に母校・智辯学園のコーチとなった。恩師である前監督の上村が急逝したことで06年から指揮を執ることとなったが、戸惑いがなかったわけではない。
上村は堅い守備をはじめとする緻密な野球が身上。小坂の代を全国ベスト4へと導くなど、智辯学園の強豪の地位を固めた。そのため、自分も監督となった当初は「上村監督が築き上げてきたものを曲げるべきではない」と、野球の踏襲を言い聞かせてきた。
他人の意志は、時に迷いを生じさせるものだ。小坂としては、打ち勝つ野球も取り入れたい。だが、上村はそうではない。ここではどう決断すればいいか? そういった局面が訪れた際に逡巡する。あたふたしてしまう自分に、小坂は葛藤を抱えていた。
「自分の意志を貫いて怒られたほうが納得いく」
そんな小坂が吹っ切れた出来事がある。
選手を勧誘するため中学を訪問しているなか、ある指導者から「上村監督やったら獲ってくれた」と言われた。このとき、小坂のなかに監督としての矜持が噴き出し「自分は自分です」と、その指導者に言ってのけた。
小坂は自分に目覚めたのだ。
「上村監督から教わったことは大事なんですけど、踏襲ばっかりしていても『無理や』と。ダメで怒られるんやったら、自分の意志を貫いて怒られたほうが納得いくし、勉強にもなる。そう思ってから考えが変わりましたね」

