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野球クロスロードBACK NUMBER
《ブルージェイズと94億円契約》巨人・岡本和真を育てた名伯楽が語る“指導の原点”「どんなにすごい選手でも、天狗にさせてしまうと…」
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2026/01/06 06:03
ブルージェイズと4年総額94億円の契約で合意したとされる巨人の岡本和真。智弁学園時代に指導した名伯楽が語る「指導のポイント」とは?
「そこはわかってんねや。それ以上のことがあったやろ。なんでお前、副キャプテンなのに閉会式で前に出んのじゃ。出たくないんやったら役職を降りろ!」
閉会式では優勝チームと準優勝チームに贈られる盾や表彰状などを、キャプテンと副キャプテンが受け取るのが慣例となっている。そのことをわかっていながら、杉本は決勝戦で勝ち越しを許してしまった自身の不甲斐ないピッチングから、恥ずかしくて人前に立つことをためらったのだという。
すごい素材でも…「天狗にさせるとほかの選手が萎縮する」
監督として、選手の身勝手さを許すわけにはいかなかった。だから小坂は、杉本に「お前がなんぼ偉くなっても、俺は気を遣わんからな!」と叱り飛ばしたのだ。
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「杉本はピッチャーとしてすごい素材です。そういう選手を天狗にさせてしまうと、ほかの選手も萎縮しちゃうじゃないですか。後ろで守る選手がいて、初めてピッチャーが成り立つものなんで。そこをあいつにわからしとかないけないんです」
このケースでやり玉に挙げられたのは杉本だったかもしれない。だが小坂は、エースを通してチームも引き締めていたのである。
言うまでもなく、日本一になるためだ。
昨年の2月。小坂は関係者の前で「3年以内に日本一を獲ります」と宣言した。
能力の高い選手がいるチームだからこそ、自分にもプレッシャーを課すのだ。
「今いる選手はホンマにいいんで、ちゃんと育てないといけない。だから、自分にも刺激を与えるというか、緩い部分を見せたり、優しすぎたりしてもダメだと思うんですよ。試合になれば褒めてあげるところは褒めてあげたいですけど……まあまあ怒ってるかな」
鋭い眼光を保っていた監督の表情筋が、少しだけ弛緩した。
智辯学園は甲子園で通算47勝を挙げている。そのうち、小坂が監督となってからは27勝と、その強さを高めている。
勝負師の渇き。強固な反骨心ゆえの厳しさは、勝利への勇猛な推進力となる。
小坂にとってはきっと、高校野球の頂を目指す理由はそれだけで十分なのだ。

