「大迫、終わったな」全国高校駅伝を初制覇の翌年にエース大迫傑が不調、そして…佐久長聖高名将の「不安と恐怖ではじまった監督生活」 

　全国高校駅伝で初優勝したときも、翌年度に両角先生が東海大学に行くんじゃないか、という噂がまわっていました。そのときは「絶対にない」と言われていましたが、今回は事実でした。

　当時、私は中学生を勧誘していたんですけど、その一人に山梨学院大時代の恩師である上田誠仁監督の次男・健太君がいました。彼は当時、中学3年生で全国トップクラスの選手だったんです。両角先生は「上田監督の息子が来たら、やめるわけにはいかないな」とおっしゃっていたので、何としても健太君を佐久長聖に連れてこよう、と思いました。両角先生の許可を得ることなく、上田監督に健太君とお話をさせてもらって、勧誘しました。結局、健太君は山梨学院高校に進学するんですけど、私は必死でしたね。

不安と恐怖のなかで始まった監督生活

　正直、両角先生の後を継ぐことはまったくイメージできていなかったですし、むしろ嫌でした。偉大な先生の後を引き継ぐのは、とてもじゃないけど荷が重すぎる、と。両角先生の指導を受けた佐久長聖OBなら、みんな同じことを言うんじゃないでしょうか。

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　何としても両角先生には佐久長聖に残っていただいて、引き続き指導をしていただきたいなと思っていたんですけど、私の願いはかないませんでした。

　正式決定したのは、12月に入ってすぐくらいですかね。私が「入賞できない」と思ったチームを両角先生は7位入賞まで持っていきました。それで、余計に自分では「無理だな」と感じて、ひどく落ち込みました。両角先生が選手に伝えたのは年が明けてからでした。

　今後、私がどのように指導していくべきなのか。両角先生からのアドバイスはまったくありませんでした。ただ「やりたいようにやれ」と。「ちょこちょこ顔を出したり、アドバイスすることは逆に迷惑になる。お前が気を遣うだけだから俺は一切顔を出さない」という考えでした。今思うと非常に有難かったんですけど、私の監督生活は不安と恐怖のなかでスタートしたんです。

〈全4回の2回目／つづきを読む〉

#3に続く

「スカウトに大苦戦」「正直、何をしたらいいのか」強豪の指揮を受け継ぐも全国高校駅伝で“ワースト記録”…佐久長聖高の名監督「黎明期の苦闘」

#4

全国高校駅伝3年ぶり入賞で「ホッとして謎の発熱」した12年前…佐久長聖高・高見澤勝監督が“開眼”したわけ「こうやればいいんじゃないのか」

#3

「スカウトに大苦戦」「正直、何をしたらいいのか」強豪の指揮を受け継ぐも全国高校駅伝で“ワースト記録”…佐久長聖高の名監督「黎明期の苦闘」

#2

「大迫、終わったな」全国高校駅伝を初制覇の翌年にエース大迫傑が不調、そして…佐久長聖高名将の「不安と恐怖ではじまった監督生活」

#1

「親にも言うな」セオリー破壊の区間配置で初優勝…17年前、全国高校駅伝“超名門校”の原点を現監督が回想「今考えても、最強世代だった」