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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高1の中田翔が「自分もちょっといいですか?」ベテラン記者が振り返る“投手・中田翔”の記憶…最後まで「根っこはピッチャーだった」と思うワケ
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/12/20 11:03
ドラフト会議では4球団競合の末、1位で日本ハムに入団
プロ野球に進んでから「打者」として活躍した中田翔選手のことは、みなさんのほうが、きっとよくご存知だろう。
日本ハム、巨人、中日のプロ通算18年、中田翔選手は309本塁打を放ち、打点王を3回受賞し、あまり知られていないかもしれないが、一塁手としてゴールデングラブ賞に5回も選ばれて、そしてこの秋、現役生活に幕をおろした。
「本当はピッチャーがやりたいんだよなぁ」
一塁手として、そして外野手としてペナントレースのグラウンドに立つ中田選手を、何度か見る機会があったが、そんな中田選手を見ながら私はいつも、「でも、本当はピッチャーがやりたいんだよなぁ」と、勝手にしんみりしていたものだ。
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だって、彼は試合中、ちょっと時間があると必ずベンチからボールをもらって、すぐ他の野手とキャッチボールを始めた。
そしていつも「投手・中田翔」として、きちんとフォームを作って投げる。時には、セットポジションをとって投げたりもしていたが、そこには決してお遊びや時間つぶしじゃない「真剣さ」が、いつも漂っているように見えたものだ。
だから「ああやっぱり、根っこはピッチャーなんだなぁ」と、いつもひとりで勝手に納得してきた。
――本当は、ピッチャーやりたかったんじゃないの?
本人に直接、訊いてみる機会はなかったから、その答えはわからない。だが私は、プロ野球のペナントレースのここ一番の修羅場で、投手・中田翔がどんな投げっぷりでピンチをきり抜け、平然と悠々と、マウンドをおりてくるのか。その姿を見たかった……と今も思う。
長い間、おつかれさまでした。

