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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高1の中田翔が「自分もちょっといいですか?」ベテラン記者が振り返る“投手・中田翔”の記憶…最後まで「根っこはピッチャーだった」と思うワケ
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/12/20 11:03
ドラフト会議では4球団競合の末、1位で日本ハムに入団
こちらの首の高さのボールをミットの甲を上にして、伏せるように受けたら、捕球の衝撃でそのミットの甲が顔に向かって飛んできた。
お粗末なキャッチングに、マウンド上で中田投手がニヤリとしたように見えた。なんてパワーだ、1年春でこのボールかよ!
4、5球も受けたあたりで、向こうから西谷浩一監督がやってくるのが見えて、中田投手がマウンド上で、右手を激しく振った。
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ダメ、ダメ……もうダメです!
そこだけが1年生らしくて、かわいかった。
そして、その夏。
中田翔、初めての甲子園大会の時だったと思う。忘れられないシーンがあった。
高校1年生…衝撃の「夏の甲子園」
相手の高校は忘れたが、マウンド上に中田翔投手がいた。
ランナー二塁、マウンド上、セットポジションの中田投手が二塁走者に目を合わせる。ジッと目を合わせたまま、2秒、3秒、4秒。二塁走者はピクリとも動けない。
そのまま左足を上げてモーションに入った中田投手。二塁走者に目を合わせたまま左足を踏み込んで、最後の最後で一気に体の左右をきり替えると、ビュッと振り下ろした右腕の指先から放たれた速球が、143キロで右打者のアウトローにビシャリときまったから、ヘエーッと声をあげてしまった。
その試合、そんな場面が2、3度あって、私は中田翔投手の天才的ピッチングセンスに仰天しつつ、相手に目を合わされると人は動けなくなること、けん制球を投げなくても二塁走者のリードを許さない方法があることを、この日の「投手・中田翔」から学んでいた。

