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LA紙「ヤマモトは圧倒的。傑出した才能」ドジャース伝説エース「達人だ」“完投絶滅”の常識を破った山本由伸…MVP快投は米国でどう報じられたか
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ジャック・ハリスJack Harris
photograph byROBERT GAUTHIER/Los Angeles Times
posted2025/12/24 06:02
時代も野球も移り変わり、完投が重視されることが少なくなった時代に、山本由伸は大舞台で快挙を達成した
シリーズの流れは、初戦を11対4で大勝したブルージェイズがつかんでいたが、第2戦で確実にドジャースへ傾いた。次の3試合はドジャー・スタジアムで行われる。
“完投なんて考えて投げない”現代野球での快挙
メジャー全体でも、2001年にアリゾナ・ダイヤモンドバックスのカート・シリング以来、これほどの投球内容を何試合も連続で記録した選手はいなかった。ワールドシリーズで完投が記録されたのは、2015年、カンザスシティ・ロイヤルズのジョニー・クエトまでさかのぼる。
完投がこれほど珍しくなったのは、偶然ではない。
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近年、野球というスポーツは、球史に伝説として名を残すような投球が生まれにくくなっている。先発投手は今や、交代のタイミングまで全力で投げ続けるよう指示され、その後は綿密に構築されたブルペンにバトンを渡してゲームを優位に進めるよう、試合運びが組み立てられる。
「完投しようなんて考えてマウンドに立つ投手はいないだろう」とドジャースの投手コーチ、マーク・プライアーは語った。
「今の時代なら、なおさらね」
と三塁手マックス・マンシーも同意した。
だが、そこに現れたのが山本由伸だった。
圧倒的かつ効率的…LA紙もハーシュハイザーも賞賛止まず
小柄でありながら傑出した才能を持つこの右腕を、ドジャースは2年前のオフシーズンに日本から獲得した。そして迎えたこのポストシーズン、27歳のスーパースターは、まるで時計の針を巻き戻したかのような投球を突如披露している。
ナ・リーグ優勝決定シリーズでミルウォーキー・ブリュワーズ相手に1失点完投勝利を挙げた山本は、土曜の夜のワールドシリーズ第2戦でも再び完投し、ドジャースはブルージェイズに5対1で勝利した。この試合で山本は4被安打8奪三振に抑え、2試合連続で9回を投げ切った。
その投球内容は巧みで、緻密に組み立てられ、そして圧倒的だった。山本は序盤こそ走者を背負い、3回には1点を失う。しかしその後は20打者連続でアウトを奪い、ドジャースのポストシーズン記録を更新した。この勝利は極めて大きな意味を持つ。ワールドシリーズはこれで両軍1勝ずつとなり、第3戦に向けて舞台をドジャー・スタジアムへ移すことになる。
この偉業は、どこか懐かしさを呼び起こすものだった。そして約4000キロも離れたレストランで試合を眺めながら、ハーシュハイザーもその感覚を味わっていた。

