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WBCの日本戦…なぜ東京開催試合が減った? WBCテレビ放送が消えた“本当の意味”「日本から米国へパワーバランスが完全に逆転」激変するスポーツ放送の今
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水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byNaoya Sanuki
posted2025/12/18 17:02
地上波放送が消える来春のWBC。Netflixの進出はMLBにとっても渡りに船だった
中継権の交渉に関しても、前回大会までは日本での中継権を欲しがる事業者が日本にしかなかったから読売を通して行われたわけで、米国内に欲しいという企業が現れれば、MLB側が直接交渉を行ったのは自然な流れだったのではないだろうか。
「大会を協議する中で読売がMLBから排除されることはあり得ないと思います。状況は読売も把握しているはず。MLBが日本で文化事業を実施する場合、読売は最も信頼できる集団であり、交渉相手だと思います」
コウタ氏はそう強調する。だからこそ、力関係に従って動く以外はあり得なかったのかもしれない。それがビジネスというものなのだろう。
ネットでバラ売り…米スポーツ放送の今
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Netflixといえば今、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの映画事業と配信事業を約11兆円で買収しようと動いていることが話題になっており、米国ではハリウッドが破壊されると憂慮する声が噴出している。この買収劇が示すように、批判を恐れず自分たちが目指すビジネスに邁進するのがNetflixだ。WBCの日本独占配信が成功すれば「今後ますます、大イベント企画がネットに移るでしょう」ともコウタ氏は指摘する。
米国では、その流れはすでに加速している。
例えばNFLはAmazon Primeで配信されるようになったが、一部の試合をPeacock(NBC系列)、それ以外の一部の試合をESPN+、クリスマスデーの2試合をNetflixと複数のプラットフォームにばら売りしており、米スポーツビジネス専門メディア「スポーティコ」によると、NFLの全試合を視聴するためには年間788ドル(約12万円)かかるという。他のプロスポーツリーグも試合配信をばら売りする方向にどんどん進んできており、ファンはいくつもの配信サービスを契約しなければスポーツが観られなくなってきた。こうなると「多少は興味がある」という程度のファンは、もうスポーツを観なくなる。ファンの中に「カジュアルな層」というものが存在しなくなり、最終的には閉塞感が強まりプロスポーツ人気は死んでいくのではないかと指摘する声も、米国では出ている。配信へと移行していく今の流れは、スポーツ界が自分で自分の首を絞めているかもしれないということだ。

