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WBCの日本戦…なぜ東京開催試合が減った? WBCテレビ放送が消えた“本当の意味”「日本から米国へパワーバランスが完全に逆転」激変するスポーツ放送の今
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水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byNaoya Sanuki
posted2025/12/18 17:02
地上波放送が消える来春のWBC。Netflixの進出はMLBにとっても渡りに船だった
「急に持ち上がった話ではなく、2年以上前、いやもしかしたら2023年の前回大会終了直後から中継権を狙っていたのかもしれません。ワールドワイドに展開している、最も巨大な配信サービスですし、優秀な人材もどんどん他社から引き抜いている。自信があるのでしょう」
WBC日本戦、アメリカ開催増加の意味
では大会の組み合わせ、プールについてはどうだろう。前回大会は1次ラウンドを東京ドームで行った後、台湾プールの1次ラウンド突破チームと再び東京ドームで準々決勝ラウンドを戦い、そこを勝ち進めば米国での決勝ラウンドに進出という形式になっていた。だが来年の第6回大会は、東京で開催するのは1次ラウンドのみ。日本を含むプールはこれを突破すれば準々決勝ラウンド、さらに決勝ラウンドをフロリダ州マイアミで戦うことになる。日本は準々決勝ラウンドを取り上げられ、利益を奪われてしまったということなのか?
「MLBは、ラウンドを早々に米国に持っていきたいということでしょう。その方が選手たちのコンディションも整えやすいですから。WBCにトップ選手が出場してほしいが、ケガの懸念もある。ネトフリから巨額の中継権料が入ることが決まっているので、もう日本は最初だけでいいでしょう、ということだと思います」
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先述の通り、Netflix独占配信の契約だけでMLBは150億円を得る。WBC史上最高額を更新した前回大会の収益は140~155億円で、その大半は日本側が稼ぎ出した収益だったといわれている。だが今回は、MLBがNetflixの契約を新たに得たため、それ以外に米国内中継や日本以外の海外中継権、米国内のスポンサー収入なども含めると日本以上の収入を稼ぎ出すことになる。つまり、ビジネスにおけるパワーバランスが完全に逆転したのが今回のWBCだ。
大会規模拡大→米企業中心へシフト?
そうなると、大会のプールと開催地が決定した時点でNetflixの契約が決まっていたとしても不思議ではない。それらが発表されたのはいつかというと、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)の公式サイトには、2024年8月21日の日付で発表リリースが掲載されている。開催概要が決定するまでに何度も協議を重ねたであろうことを考えれば、大会の2年以上前から中継契約も決まっていただろうというコウタ氏の読みとも合致する。

