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山本由伸の変化「他の人は気づかないけど」正捕手スミスが重要証言…ドジャースのワールドシリーズ連覇を支えた男「じつは内野手失格だった過去」―2025年下半期読まれた記事
text by

及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAFLO
posted2025/12/20 11:01
ドジャース山本由伸の投球を正捕手として支えるウィル・スミス
大リーグでは先発予定の投手には、その集中を邪魔しないために試合前に話しかけてはいけないことになっている。捕手に対してはそういった規則はないが、ブツブツと呟きながら足早に動き回っている捕手も多い。試合前のデータ分析、バッテリーミーティングに加え、打撃練習も加わり、目が回るような忙しさだ。データ野球の発展により、捕手の役割は年々増加している。
「肝心なのは準備だ。準備ができていればピンチの時により早く、より良い決断を下すことができる。でもデータが全てではない。投手のコンディション、打者の反応など自分の目で見えることにも注意を払わなければならない。正しい判断をするためにはデータと感覚のバランスが最も大事なんだ」
そしてこう続ける。
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「大変だけど楽しいよ。挑戦しがいがある」
捕手転向のきっかけは“内野手失格”だった
スミスが捕手を始めたのは大学からだ。
「内野手だったのにフィールディングが下手すぎて、守れないなら捕手をやってみろとコーチに勧められて始めたんだ」と自虐を交えながら教えてくれた。
消去法でのコンバートだったが、勉強熱心な性格が性に合っていたのだろう。元来の肩の強さと高い打撃力も評価され、2016年にドジャースにドラフト1巡目で指名されている。メジャー昇格は'19年で、その2年後から正捕手を務めている。メジャー7年目を迎えるが、捕手としてのスキルアップに余念はない。武器とする強肩で盗塁阻止数はランキング首位に立つ一方、課題のブロッキングは63位と下位に沈む。
「フレーミングとブロッキングが課題なのでオースティン・バーンズ捕手やコーチにアドバイスをもらいながら練習している。同じミスをしないように努力したい」
500試合以上、マスクをかぶって出場し、うれしい勝利も眠れないほど悔しい敗北も経験した。そんな中で「すべてが思い通りに進んだ試合」として昨季のパドレスとのディビジョンシリーズを挙げる。
1勝2敗と後が無い状態で迎えた第4戦。先発を欠くドジャースはブルペンの8投手による継投策を敷き、相手打線を無失点に抑えて勝敗を五分に戻した。山本が先発した第5戦も強力なパドレス打線に1点も許さず、3勝2敗でリーグ優勝決定シリーズ進出を決めた。
