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野ボール横丁BACK NUMBER
大谷翔平「じつは落選していた」楽天ジュニアのセレクション…そのエースだった“仙台の天才”の告白「私が野球に絶望し…プロを諦めるまで」
posted2025/12/20 11:04
大谷翔平と同年だった「仙台育英の天才」はなぜ野球に絶望したのか（写真はイメージです）
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Makoto Kenmizaki
その書籍のなかから“消えた東北の天才”を紹介する。あの大谷が落選した楽天ジュニアでエースだった男、渡辺郁也。彼を追って、仙台を訪ねた。【全4回の3回目／第1回～第4回も公開中】
＜東北で世代ナンバーワン投手と評価された渡辺。仙台育英高校でもエースとして夏の甲子園2勝。そして青山学院大に進学した。しかし高校時代から「うっすら（プロ野球は）ダメっぽい」と感じていたという。天才が告白する「ライバルたちに抜かれていく恐怖」。＞
◆◆◆
「もう無理だ…」大学には吉田正尚がいた
渡辺郁也は大学では野手一本で勝負するつもりでいた。入学直後は監督の指示で投手をやらされたが、約1カ月後、断固とした決意で野手転向を申し出る。
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ところが、打者としても入学早々、気後れを覚えてしまった。一つ上の世代に吉田正尚（レッドソックス）がいたからだ。渡辺はこう呻く。
「もうヤバかったですね。体つきも、パワーもぜんぜん違いましたから。身長は私よりちょっと大きいくらいなんですけど、太ももは倍くらいあって。体重が85キロくらいあるのに体脂肪率は10パーセントを切ってたと思うんです。トレーニングがすごいんですよ。吉田さんを見てバッティングも無理だってなりましたね」
吉田の生活スタイルにも圧倒された。
「あの人が学校に行ってるの、見たことないですから。トレーニングして、野球してっていう生活でしたね」
近年は少なくなったようだが、ひと昔前まで大学野球の選手の中には、そういう選手が一定数いた。一般企業の場合、卒業できなかったら内定取り消しになるが、プロ野球機構にそのようなルールはない。なので卒業への道は端からあきらめ、在学中の4年間はとにかくプロ野球選手になるために必要なことだけにエネルギーを費やすのだ。
「（吉田さんは）ほぼプロみたいな生活だった」
渡辺の同期に聖光学院出身の岡野祐一郎がいた。渡辺と同じく宮城県で生まれ育った。岡野は大学卒業後、東芝を経て中日に入団した元プロだ。その岡野もこんな「吉田正尚伝説」を語っていた。
