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兄との比較は「つらいと思ったことはなくて…」清宮幸太郎の弟・福太郎に聞く“大学で野球を辞めるワケ”「いつかは諦めなきゃいけない時がくる」
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清水岳志Takeshi Shimizu
photograph by(L)Takeshi Shimizu、(R)Hideki Sugiyama
posted2025/12/05 11:01
大学で野球を辞める決断をした清宮福太郎(左)。兄・幸太郎は日ハムで主力として活躍している
「3年の夏のキャンプに行けなかったんです。それは秋のシーズンは出られないということなので、これは厳しいなと。3年の11月、この時期になると、就活を始める仲間が出て来て、そろそろ自分も将来を考えなければいけない。この状態で野球を続けるのはどうなんだろう……と。そこで『大学まででやめよう』と決断しました」
両親にも納得して出した答えを伝えた。
「父親にも母親にも進路に関してとやかく言われたことはないです。兄の選択も自分の選択も尊重してくれた2人なので」
「もちろん夢はありました。でも…」
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兄のようにプロ野球で活躍する自分の姿を夢見たことも、もちろんあった。
「もちろん、夢はありました。でも、いつかは諦めなきゃいけないときはくるので。その時の自分の立ち位置では無理なのかなと。3年生になったときぐらいに、野球をやめるという方向性は固まってきて、決定打がそのキャンプに行けないタイミングだったので、葛藤とかはなかったです。
先日のドラフトで同期の2人(※伊藤樹と田和廉)がプロの世界に行くことになりました。やっぱりプロに行きたかったなと思ったのは僕だけではなくて、同期の中で何人かいると思うんです。でも……うん、自分はそんなに大きなショックはなかったです」
福太郎の野球人生は幸太郎という兄の存在抜きでは語れない。
兄には飛びぬけて輝いた高校野球の時代があって、ドラフトの時はその年で一番、注目された選手だった。
ならば、その弟は選手としてどれほどできるのか――?
そういう眼差しを向けられるのは、宿命みたいなものだ。清宮家に生まれたからには避けては通れない。ただ、こちらが「お兄さんと重ね合わせることばかり聞いて申し訳ないね」と前置きするたびに当人は「いえ、ぜんぜん大丈夫です」と返してくれた。
「今、こうして結果的に兄には劣っているんですが、比較されることは……そうですね、つらいと思ったことは正直、なくて。兄がいたからできた経験も少なくないですし、注目されて取り上げられることはありがたいと思ってプレーしていました」
兄に関する問いは、背負った“福”の一つと自然と受け入れていたのかもしれない。

