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「タクマに謝りたい。テンシンが勝つと思っていた」英国人記者が断言した井上拓真と那須川天心の“明確な差”「ついに“兄の影”から抜け出した」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/11/27 11:02
戦前は「那須川天心が有利」と予想していたトム・グレイ記者。井上拓真のボクシングを興奮気味にレビューした
私の採点では、テンシンに与えたのは1、2、7ラウンドだけだ。7ラウンドも、人によってはタクマにつけるだろう。タクマは中盤で一気に差を広げ、その大きなリードを確保した後、チャンピオンシップラウンド(11、12R)では見事なジャブで試合を完全に支配した。テンシンの苛立ちは目に見えて分かった。
最後にタクマの今後についても触れておきたい。ジュント・ナカタニ(中谷潤人)が階級を上げたことでベルトが空き、タクマは王座返り咲きを果たした今、バンタム級で統一戦を狙うべきだと思う。ツツミに敗れたことで一度は統一戦路線が頓挫したが、完全復活したと言える今こそ、その道に戻るべきではないか。
ベストの選択肢はツツミとの再戦だと思う。タクマはあの敗北の借りを返したいはずだし、“あれは本来の自分ではなかった”と言っていたと思う。
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ツツミが来月、ノニト・ドネアとの試合に勝てば、タクマとツツミのリマッチ&統一戦は日本国内でビッグビジネスと呼べる一戦になる。正直なところを言うと、スーパーフライ級で3冠統一王者になったジェシー・“バム”・ロドリゲスがバンタムに上げてくるなら、対戦を追い求めるのは得策ではないと考える。“バム”は今、恐ろしく強い。ただ、それ以外のどの強豪と組み合わせても面白く、(9月に武居由樹を破った)WBO王者クリスチャン・メディナとの統一戦も選択肢になる。
タクマは年齢もまだ29歳。ついに“兄の影から抜け出した”と言える勝利だった。テンシンはまだ世界王者になっていないのに日本で圧倒的な人気があることは知っている。その相手にこれだけのパフォーマンスを見せたのだから、国内のファンも“タクマはとんでもないボクサーだ”と認識したはずだ。私もタクマの今後をこれまで以上に注目して見守っていきたいと思っている。〈つづき→那須川天心編〉

