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那須川天心「テンシンは未完成だった…だが焦るな」英国人記者が指摘する“高速育成プラン”への懸念「敗戦は恥ではない」来年は“土台の作り直し”
posted2025/11/27 11:03
試合後会見での那須川天心。20分以上にわたって報道陣に対応した
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Takuya Sugiyama
那須川天心(帝拳)が初黒星を喫した。11月24日、トヨタアリーナ東京で行われたWBC世界バンタム級王座決定戦で井上拓真(大橋)と対戦した那須川は、最初の2ラウンドこそ好スタートを切ったものの、3回以降に引き離されての完敗。抜群の格闘センスでプロボクサーとしても無敗街道を走っていた天心に何が起こったのか。そして、当然のように現役続行を表明した“神童”が世界の頂点に立つには何が必要になっていくのか。那須川の能力を高く評価してきたリングマガジンの編集人を務めるトム・グレイ氏にじっくりと語ってもらった(以下、グレイ氏の一人語り)
「まだ完成されたボクサーではない」
27歳のテンシンともうすぐ30歳になるタクマは年齢は3歳ほどしか違わないが、テンシンは試合の中で“年季の差”を見せつけられた。ボクシングの経験に大きな差があった。端的に、ボクシングキャリアの中でテンシンはこれまであのレベルの相手と戦ったことがなかった。
今年2月、テンシンが苦しみながらも判定勝ちを収めた元WBO世界バンタム級王者ジェイソン・モロニーも良い選手だが、タクマにはそれをも上回るほどの引き出しの多さがある。今回、その部分が決め手になった。
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プロボクサーとしてベテランと呼べる存在のタクマが下降線に入っているという見方は完全に間違いであり、世界レベルでも効果的なボクシングができる選手なのだと改めて証明した一方で、テンシンが露呈したものがある。“テンシンはまだ完成されたプロボクサーではない”という現実を私たちは目撃することになった。

