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「本気で勝ちたいに変えなきゃ」鹿島アントラーズ・鬼木達監督の覚悟…常勝軍団の指揮官が自問自答を繰り返したワケ「自分の力のなさを痛感しました」
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池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byNaoyoshi Sueishi
posted2025/12/02 11:00
今季から鹿島アントラーズを率いる鬼木達監督
鬼木の言う「楽しむ」とは、向上し続ける苦しさも引き受けた上での前向きな熱量のことだ。それを日々の練習で示し、一つずつ積み重ねた先に目指すサッカーがある。
今季副キャプテンを務める植田直通は鬼木の姿勢に信頼を寄せる。
「勝っていても、負けていても、言っていることがブレない。そこが信頼できる。監督がドシッと構えているから、迷うことなく自分たちもついていこうという気持ちになるんです」
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相手を圧倒するスタイルを追求するべく、開幕前の宮崎キャンプではボールを「止める・蹴る」を繰り返し、攻撃の精度向上を目指した。三竿健斗は鬼木体制の変化をポジティブに受け止めていた。
「昨年までは川崎時代の練習を動画で見ながら個人的に練習していたけれど、その意識をチーム全体で持って取り組むことで大きく変わった」
指揮官の自問自答「自分の力のなさを痛感」
ところが、鹿島の新たな挑戦はいきなり転機を迎えた。'25年シーズン開幕の湘南戦。多くの期待を集めて臨んだ初戦は、相手の激しいプレスに晒され、受け身に回った。次々と最終ラインの背後に走られることで重心が下がり、ボールを保持できない。0-1。キャンプで作り上げてきたスタイルの力を見せられないまま敗れた。
「正直、自分の力のなさを痛感しました」
その夜、鬼木は自問自答を繰り返した。
「湘南と自分たちを比較して仕上がりに大きな差があった。自分に対して『調子に乗るなよ』と。まず自分自身の力のなさを認識した上で、今のチームに何が一番必要なのかを考えました」
目指すものは変わらなかった。見直したのは、自分の歩み方のほうだった。
「新しいチームで、いきなり全部を変えられるほど簡単ではないし、自分はそんな魔法みたいな力も持っていない。目指すものは変えずに、スピード感のところ。ゆっくりでいい、積み上げていこうと」
まずは選手の「今持っている力」を最大限発揮させる。その姿勢からチーム全体を整えていった。
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