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大谷翔平WBC出場へ「球団と選手の契約書に“出場禁止”の条項はない」侍ジャパンへ3つのハードル「ドジャース」「選手会」「代理人」それぞれの思惑
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山田結軌Yuki Yamada
photograph byGetty Images
posted2025/11/23 11:04
前回大会では投手と打者の二刀流で活躍し日本を頂点へと導いた
第一段階の「所属球団の許可」に関しては、ドジャースが出場をOKするかという問題がある。大前提として、ドジャースの大目標は自軍の強化、そしてワールドシリーズ3連覇を目指すこと。球団オーナー、社長、編成本部長、GMら球団幹部の立場としては、勝つために最も重要な選手が、大谷であることは間違いない。
先発投手としてはリハビリシーズンが終わり、開幕からローテーションの1人として、ポストシーズンまで戦い抜く期待をかけている存在だ。無論、主力打者でもある。仮に出場を許可したとしても、ドジャースは侍ジャパン側に球数や登板間隔、打席数などの起用方法をリクエストする“権利”がある。
MLB選手会、代理人の立場は…
実際、前回大会では侍ジャパンのスタッフが、大谷の所属するエンゼルス(当時)、ダルビッシュ有の所属するパドレス、メジャー1年目の開幕を控えていた吉田正尚のレッドソックスとは随時、コミュニケーションを取っていた。WBC後に控えるシーズン開幕に向け、投手なら球数を段階的に増やし、強度を高める。打者なら打席数をこなし、実戦感覚を調整しなければいけないからだ。
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第二段階は、「MLB選手会の承認」だ。選手会は、その名の通り選手の立場で権利や利益を高める組織である。ここは、事務的な手続きが主なので「反対」することは、ない。さらにWBCを主催する「WBCI」はMLBと選手会が共同で設立した運営組織。構造上、スター選手参加を反対する立場にない。
では最後の段階である「選手の代理人事務所の許可」はどうか。代理人は選手の契約(年俸や契約総額)から、報酬を得る立場だ。そのため、ケガをされたら困る、という立場は球団と近い。ただ、選手の気持ちには、ときに球団側以上に親身になり、寄り添う。出場希望の選手が、大型契約の途中なのか、契約最終年なのか、あるいはこれからレギュラー定着を狙う立場なのか。選手の年齢を考慮し、キャリアを尊重しながら、代理人としては、ときに快く送り出し、ときにはシーズンに集中するために不参加を促すことがあるかもしれない。
ドジャースと「保険問題」
つまり、一番高いハードルは最初の「所属チームからの許可」ということになる。MLB機構と選手会は大会が盛り上がればリーグ全体の利益につながるため、スーパースターの参加を望む。しかし、所属チームにとって大切なのは、まず自軍の勝利だ。だからこそ、自分たちの抱えるスター選手の参加には慎重になる。


