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「東大“なのに”すごいね」を超えて欲しい…学生水泳界で大躍進!? “異色の強豪”になった東大水泳部 現役部員が語るリアルは?「今後の課題は…」
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/11/25 11:03
東大水泳部で活躍する(左から)2年生の水野吉晴、今季から主将を務める3年生の小野七晴、チームのエースだった4年生の松本恭太郎
そんな持田は、来春には法学部を卒業し、公の仕事に携わる。多忙が予想される世界でもあるだけに、いまは本格的な競泳競技を続けるつもりはないという。
また、1年時から絶対的なエースとして部を引っ張った工学部の松本は大学院に進学する。こちらも研究が本格化すれば、「これまでほど競技に時間はさけなくなると思う」と考えている。
学生時代の部活動は…結果への“プロセス”を学ぶ場
東京大学という日本最高峰の受験難易度を誇る大学の、決して強豪ではなかった水泳部に、押切という全くそれとは違うカルチャーで育ったコーチが就任して4年。
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その不思議な化学反応は、異色の強豪チームを作りだした。
押切はここまでの経験をこんな風に振り返る。
「本来学生の部活動は、レベルの高低に関わらず、結果そのものよりもそれを出すための“プロセス”を学ぶ場だと思います。どうすれば記録が伸びるのか。どうすれば目標に近づけるのか。それを指導者とともに考えながら試行錯誤する経験は、社会に出たときに他の分野でも間違いなく活きます」
「だからこそ、中途半端ではなく全力で挑戦してほしかった」と押切は続ける。
「彼らの多くはきっと、いずれは各分野で日本を背負う立場になるのでしょう。仮に水泳そのものを辞めたとしても、その時に少しでも水泳部時代の経験が活きれば嬉しいです。そして、卒業後も水泳を好きでいてくれて、何らかの形で水泳界の発展に貢献してくれたら――これ以上ない喜びですね」
押切にとっての教え子1期生にあたり、結果的に東大の「黄金世代」となった年代が卒業することで、来年からはまた新たなサイクルがはじまることになる。
果たして最強世代が去った後の東大水泳部は、どんな姿へと変化していくのだろうか。もちろん、確たる未来が確約されているわけではない。だが、きっとこのチームはますます強くなっていくのだろう。
彼らにはもう、「ガラスの天井」はないのだから。


