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核心にシュートを!BACK NUMBER
「(田中)碧もショックかと」日本代表FW上田綺世の知られざる素顔…後藤啓介に「ファンペルシのコツ」伝授、オランダで同僚DF渡辺剛も重要証言
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/11/18 11:05
日本代表の最前線の軸となる上田綺世。彼が見せる素顔とは
「小川くんとかはセットプレーからのゴールもすごく多いし。僕も直接(アドバイスを)聞いたりしていて。選手として、ストライカーとしての幅も広がるのかなと思っています」
トレーニング中、2人一組で取り組むメニューで彼らがコンビを組むことも普通にある。何より、上田は9月の試合を中継したU-NEXTのインタビューの際に、こんな話をしてくれた。
「(小川との間に)ポジション争いはもちろんあります。でも、ライバルとしてという感覚が僕にはなくて。僕は自分が成長することとか、その場で求められていることを100%出すことを意識しているので。例えば、小川くんとの関係でいえば、彼の感覚や、色々な選手の感覚とか特徴、その試合で何を感じたのかとかも僕は知ってみたい。フォワードに限ったことではないですけど、ライバルとかそういうことではなく、どういう風に感じているかのフィードバックや共有みたいなものが……」
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典型的なストライカーや中心選手の姿として人々が想像するのとはかけ離れた資質が、上田にはある。彼の強みは嗅覚や感性というよりも、むしろ考えた先に出てくる知性にある。だから、そんな日本のエースが作り出すフォワード陣の関係性は、チーム内の空気や若手の風通しの良さにつながっているのかもしれない。
代表デビューの20歳後藤に教えたこと
例えば、ガーナ戦で念願の代表デビューを果たした20歳の後藤啓介もその影響を受けた一人かもしれない。彼はデビュー戦ゆえに緊張して、上手く試合に入れない可能性があることを危惧していた。しかし、ガーナ戦では最初のプレーで上手く入れたため、そこからは平常心に近いメンタルでプレーできた感覚があったという。そして、そのファーストプレーとは、試合前日、上田へアドバイスを求めたポストプレーだった。
後藤が振り返る。
「相手の前にしっかり入ることができて、それによって先にボールに触り、マイボールにできたところが良いプレーだったなと思います。前日に、綺世くんに聞いたことを頭に入れながら、あのプレーをしていたので、それが出たのかなと思います」
「綺世くんに聞いたこと」とは、フェイエノールトの監督、ファン・ペルシ直伝のポストプレーのコツである。
世間の人が考えるストライカーの典型的なイメージは、自信家やエゴイストだろう。ただ前述通り、上田は違う。そんな上田にアドバイスを聞きに行ける20歳の後藤もまた、典型的なイメージとは違うパーソナリティの持ち主だ。
上田が見せる“新しいFW像”とは
今の日本代表を見てみると、どうだろう。
堂安律はサイドで攻撃も守備もハイレベルで取り組み、新しい10番の選手像を作ろうとしている。
キャプテンの遠藤航は、前任者である吉田麻也の“昭和の母親的”なきめ細やかさ、その前の長谷部誠が見せていた“昭和の父親的”な威厳とも異なる、アニキ的なリーダーシップを見せる。そして、チームに「W杯に優勝するのにふさわしい行動や考え方とはどういうものか」という規範を作った。
では、上田は……。


