オリンピックへの道BACK NUMBER
「人生経験が足りない」ラストイヤーの坂本花織(25歳)にじつはあった反対意見「いやー、そりゃ負けたくない」“浅田真央に並んだ”NHK杯優勝の舞台裏
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2025/11/10 17:43
NHK杯フリー『愛の讃歌』の演技を行う坂本花織
「まじか(笑)」コーチの言葉に苦笑
「最後だから、という気持ちはあまりふだんはないんですけど」と言う。実際、そうした気負いは言動には感じさせない。一方で、最後と決めて挑むシーズンだからこそのスタンスや取り組みもある。
その中でもやること、「常に成長を志す」姿勢は変わらない。
「まだまだ伸びしろもあるので、これでマックスとは言わず、しっかり、もうちょっと上を目指して頑張れたらなと思っています」
ADVERTISEMENT
中野コーチが「理想の60%ぐらい」と評価していたことを知ると、
「まじか」
と苦笑し、話した。
「中野先生が100%って言えるような演技を目指します」
次世代への正直な思い「あと数カ月待って!」
フランス大会の2位、NHK杯の優勝で、12月上旬に名古屋で行われるグランプリファイナル進出を決めた。
「グランプリシリーズ2戦とも220点を超えたことはなかったので、オリンピックシーズンに220をコンスタントに出せたというのはすごく自信にもつながります」と手ごたえを得て、臨むことができる。
そのグランプリファイナルには、坂本が塗り替えるまで今季世界最高得点の保持者でありフランス大会の優勝者、17歳の中井亜美もすでに進出を決めている。
その中井に触れつつ、笑顔で、どこか楽しそうにこう語った。
「いやー、そりゃ負けたくないですね。まだちょっと次世代に譲るのは……。あと数カ月待って! みたいな感じで思ってます」
目指す大舞台までの道のりの途中にある坂本花織は、理想の演技を体現して集大成を飾るために、さらなる進化を期している。
(撮影=榎本麻美)


